中継ぎ右腕の武藤は、昨年はいわゆる敗戦処理としての役割で登板を重ね、今季もビハインドの場面の回跨ぎなどの役目で黙々と好投を続けると、徐々にしびれる場面での出番をこなした。「プレッシャーも感じるが、意気にも感じている」と、150キロに届く球威を増したストレートを投げ込むこと31試合、防御率も3.32と結果を出し、球団からも好評価を受け800万円アップの年俸2000万円(推定、以下同)で契約を結んだ。それでも「1年1年が勝負」と、気を引き締めた武藤に慢心はなさそうだった。
今年がベイスターズ移籍1年目の中井は、オープン戦からアピールを続けると開幕一軍を果たし、バックアップ要員としてほぼ1年間一軍で活躍。主にセカンドの守備固めから、相手ピッチャーが左の際は、スタメンでトップバッターとしても起用されるなど、ユーティリティプレーヤーとして貴重な戦力となった。今季は79試合に出場し、打率.248、ホームランも3本放つなど期待以上の働きを見せた。結果、75%アップの2100万円で契約更改を終えたが、「一度戦力外となった身。(もっと)成績を上げていきたい」と、改めて気を引き締めていた。
共に1989年生まれの30歳は、若いベイスターズにとっては年長者の部類に入る。また、武藤は強いドラゴンズ時代を熟知、中井は常勝ジャイアンツで揉まれた経験を元に、若手選手に貴重なアドバイスも送れる存在で、両者とも「若手に声を掛ける」ことで、チームをまとめる覚悟もできているようだ。
強いチームには、スター選手だけ在籍している訳ではない。彼らのような縁の下の力持ちが絶対不可欠なだけに、来季以降も第二の故郷、横浜で輝き続けてもらいたい。
取材・文 ・ 写真/ 萩原孝弘