審判部は北の湖理事長に、昇進を審議する臨時理事会の開催を要請。同24日午後の横審で推挙されると、同26日の夏場所(5月=両国国技館)番付編成会議及び臨時理事会で、鶴竜の横綱昇進が正式に決まる。
初場所(1月=両国)は14勝1敗で、優勝決定戦で横綱・白鵬に敗れた鶴竜は、賜杯こそ逃したが、「優勝に準ずる成績」と認定され、春場所で初の綱獲りが懸かった。
しかし、日本相撲協会内部では鶴竜の綱獲り機運は全く盛り上がらず。ファンの注目の的は、初のカド番を迎えた稀勢の里や、初の上位進出となった“期待のホープ”遠藤、エジプト出身の大砂嵐らで、鶴竜の綱獲りには注目が集まらなかった。
ノープレッシャーのなかで、鶴竜は3日目、早々に平幕・隠岐の海に敗れたが、これで「気持ちが楽になった」と言い、その後は連勝街道をばく進。12日目には全勝の横綱・日馬富士を破り、14日目には1敗で並んでいた白鵬を破って、気が付いたら単独トップに。千秋楽では、大関・琴奨菊に完勝して、あれよあれよという間に、初優勝を決めた。
横綱昇進への内規は、「2場所連続優勝、もしくはそれに準ずる成績」と定義されており、平成以降、「2場所連続優勝」以外で昇進させた例は一度もない。だが、協会では、なんとか稀勢の里を横綱に上げたいばかりに、昇進へのハードルを下げてしまった。あいにく、稀勢の里は2度の綱獲りチャンスを逃したが、その機会が転がり込んだ鶴竜がワンチャンスでモノにしたのは、なんとも皮肉。
これで、87年(昭和62年)九州場所で昇進した大乃国(現・芝田山親方)以来、26年半ぶりに、「2場所連続優勝」以外で、新横綱が誕生することになった。
鶴竜は12年夏場所(5月=両国)で大関に昇進したが、昨年九州場所(11月=福岡)までの在位10場所で、大関の責任といえる2ケタ勝利をマークしたのは、わずか3場所。8勝7敗と、辛うじて勝ち越した場所が3回もあるなど、ファンの印象度も極めて薄く、「鶴竜が横綱で大丈夫なのか?」との危惧もある。失礼ながら、史上最も注目されない新横綱の誕生となるかもしれない。
横綱が3人となったことで、無理に4人目の横綱をつくる必要がなくなった。綱獲りへのハードルは高くなることが予想される。北の湖理事長、横審がなんとか、横綱にさせたかった稀勢の里にとっては、これまでより高いハードルを超えなければならなくなったようだ。
(落合一郎)