23日(日本時間24日)、マリナーズのイチロー外野手(38)と、ヤンキースに所属するマイナーの若手投手、DJミッチェル(25)、ダニー・ファーカー(25)との2対1の交換トレードが成立したことが電撃発表された。
今季、5年契約の最終年となるイチロー。22日(同23日)までに残した成績は95試合出場、402打数105安打28打点4本塁打15盗塁、打率.261と低迷していた。来季、マリナーズに残留するのかどうか、水面下で交渉も持たれたようだが、動くとしたらシーズンオフと思われていただけに、シーズン中の移籍は仰天の展開だった。
「11年半、ファンの方と同じ時間、思いを共有したことを振り返り、自分がマリナーズのユニホームを脱ぐと想像したときに大変寂しい思いになったし、今回の決断は大変難しいものだった」と、声を詰まらせながら語ったイチロー。
決め手となったのは自軍の世代交代だ。マリナーズは22日(同23日)現在、ア・リーグ西地区のダントツ最下位(4位)で、3位アスレチックスまで10ゲーム差。こうなると、イチローの今季の不本意な成績なら、来季のために若手優先起用となり、スタメンを外れることも増えると予想された。
イチローが「20代前半の選手が多いこのチームの未来に、来年以降ボクがいるべきではない、そしてボク自身環境を変えて刺激を求めたい、という強い思いが芽生えた」と話したように、出場機会が減るくらいなら、必要とされる球団へ移った方が得策と考えたのも自然な流れだろう。
感傷に浸る間もなく、同日、イチローは新たな背番号31を付けて、マリナーズ本拠のセーフコフィールドで古巣と対戦。8番右翼でスタメン出場し、第1打席で中前打を放ち、4打数1安打1盗塁だった。試合は同僚となった黒田博樹投手が先発し、7回1失点の好投で、ヤンキースが4-1で勝利。黒田が3年連続2ケタとなる10勝目(7敗)を挙げ、大家友和(元横浜)と並ぶ日本人メジャー歴代2位の通算51勝目をマークした。
ヤンキースはア・リーグ東地区で首位を独走中で、イチローは最下位チームから一転して、ワールドシリーズ出場に夢を馳せる。この日は右翼での出場だったが、ジョー・ジラルディ監督は左翼での起用を明言した。
イチローがヤンキースに移籍したとなると、気になるのは福留孝介外野手(35)の存在。ホワイトソックスから自由契約となった福留は、13日(同14日)にヤンキースとマイナー契約を交わしたばかり。現在は傘下3Aで調整中だ。
昨季の盗塁王で正左翼手のブレット・ガードナー外野手(28)が右ヒジを故障。ここにきて、手術が必要であることが分かり、今季中の復帰が絶望的となった。福留獲得はガードナー不在の保険的な意味合いがあった。ところが、イチローの加入で、その穴は埋まった。そうなると、ヤンキース内で、福留に求められた役割はなくなったといってもよく、メジャー昇格は極めて厳しい状況となった。福留はイチローの移籍で、微妙な立場に追い込まれたと見ていいだろう。
(落合一郎)