あたりを威圧するような黒光りする馬体、しなやかな身のこなしには、どこにも年齢や遠征疲れの陰りは見られない。ウオッカが素晴らしい状態で5つ目のGIに手を伸ばそうとしている。
「ドバイ遠征から戻ってきて、ここを目標に順調すぎるぐらい順調にきた」と清山助手はためらいなくうなずいた。その目は昨年との違いをはっきり物語っていた。ドバイから帰って、ヴィクトリアMに出走するのは昨年と同じローテーション。しかし、長旅による馬体減りに悩まされ、ぎりぎりの状態で送り出した昨年とは、心身ともに雲泥の差というのだ。
昨年は2月に京都記念を走ってから、あわただしくドバイへ。短期間に長距離輸送を2度こなさなければならず、反動が少なからずあった。
しかし、今回は昨年のジャパンC3着の後、有馬記念をスキップしてじっくりリフレッシュ。ドバイにも早めに入国して前哨戦を叩く余裕があった。ドバイデューティーフリーでは強豪の前に7着に敗れたが、それでも見せ場はつくった。帰国後のケアも楽だったという。
「グリーンウッドを経由して4月30日に栗東に戻ってきたけど、あちらでも乗り込んできたし、馬体もすっかり戻っている」。6日の1週前は栗東CWで3頭併せ。皐月賞2着のトライアンフマーチなどを0秒6追走して2馬身先着した。
時計も速い。5Fから63秒2→49秒2→36秒5→11秒2と文句なしだ。「ジョッキー(武豊)がまたがったなかでは、今までで一番良かったんじゃないかな。最低体重で出走せざるを得なかった昨年とは比べものにならない。精神的にも本当に強くなっている」と清山助手は言い切った。
ダービーを、安田記念を、そしてダイワスカーレットとの死闘を演じた天皇賞を制した東京、しかも牝馬同士なら死角は何も見当たらない。5つ目のGIへ、ダイワスカーレットが引退した今年は、まさに独壇場だ。