「切羽詰まっていますよ、完全に」。松井秀番記者はそう語る。
「これまでレギュラーが約束されていたから、ケガや故障しても他人事のように受け答えしていたが、今年はまるで違う。口調は真剣そのものだし、言葉の端々に悲壮感が出ている。キャンプインする前に、コンディションがいい、だなんて言ったことは一度もない男だったのに、あえて口にしているところに不安な胸のうちがうかがえる」
体は故障だらけである。昨年11月に手術した右ヒザは依然として完治に疑問符が付く。さらに一昨年の試合中の左手首骨折の後遺症がある。現在、タンパで練習を積んでいるが、ようやくスパイクを履いてフリー打撃を行ったところ。調整遅れは否めない。
「彼はどちらの場合も無理に早く練習を再開したようだ。大リーガーの常識からは考えられないね」(ヤンキース担当記者)
どういうことなのか。「大リーガーというのは自分に不利なこと、不安になることは絶対に避ける。ケガや故障で手術したら完全に治るまで再開しない。大リーグでは復活したときは手術される前と同じ状態という意味だ。それなのに松井秀はプレーしながら完治を目指すという日本式をやっている。だから大リーガーたちは複数年契約を結んで保障をつけている。松井はその辺の意味が分かっていないのかな」(大リーグ通)
実はこんな情報がある。「ヤンキースは松井をトレード要員にして投手を取ろうとしたのだが不調に終わった」(米在住ジャーナリスト)というのだ。理由は、相手球団が「故障持ちの松井秀ならいらない」。
二度の手術の結果を疑っているのだ。さらに松井にとってショックな情報もある。
「ヤンキース監督時代に松井秀をかわいがって使い続けたトーリ監督のドジャースからも断られたというんです。トーリは、松井はもうレギュラーでは使えないと読んでいたようです」(大リーグ通)
松井秀喜のバッティングは悪くないが、走塁と守備は「三流」というのが大リーグの本当の評価。これまではチームが強かったから弱点が目立たなかっただけということなのだろう。
今後、予想されるのは3つのケース。トレード、ファーム行き、解雇である。
ヤンキースで代打要員になったら出番は激減する。ア・リーグは指名打者制度で投手が打席に立たないから代打出場はほとんどない。シーズンに入って打力不振のチームに売りつけることがもっとも考えられる。ファーム行きは松井本人が望んだ場合で、来年に向けて調整を行う。
悲惨なのは解雇、つまり“クビ”だ。これは売りに出しても買い手が付かないケース。完全な孤独状態に置かれる。
「何度も解雇を経験した野茂とコンタクトをとっている、というウワサもある」(松井番)とか。ヒザを手術したらランクが大きくガタンと下がるのが大リーグである。
いずれにしても、今季の松井秀喜は苦しい立場に置かれそうだ。