レッドソックスと言えば、開幕は連敗で苦しいスタートとなった。この快進撃を支えているのは調子を取り戻した投手陣とされているが、こんな皮肉も聞かれた。「マツザカがいなくなったからだ」−−。
「手術後のリハビリ、手術等で低下した体力、筋力を取り戻す時間も必要ですから、松坂の本格的復帰は再来年になると思われます」(米メディア陣の1人)
松坂大輔(30)は10日中に右肘の『腱移植手術』を受けるが(8日時点)、レッドソックスとの契約は来年オフまで残っている。たとえ、故障で長期離脱しても給料は払う。それが契約なのだから、仕方ない…。松坂側からすれば、1球も投げずに1600万ドル(約12億円強)の年俸を貰えるわけだ。
不労所得…。松坂も心苦しく思っているはず。だが、今回の長期離脱によって、レッドソックスと松坂の折り合いの悪さか再認識させられた。
球団は松坂を獲得した07年シーズンより、専属通訳、個人トレーナー、担当広報を設けるなど、“VIP待遇”を続けてきた。「そういう契約だから」と言えばそれまでだが、松坂はメジャー式の調整法に適応できなかった。アメリカでは「肩は消耗品」なる考えが定着しているため、レッドソックスもブルペン投球数などはできるだけ少なくさせる。松坂はそれに最後まで適応できず、首脳陣との意見の食い違いを日本人メディアにこぼしていた。当然、その“愚痴”は活字になる。球団幹部に叱責される。普段は顔を合わすことのない幹部職員と対峙したことで、事の重大さを知る。謝罪するが、メジャー式の練習方法に適応できないから『結果』がともなわない。
「松坂の投げる日はベテラン捕手のバリティックをスタメン起用させていました」(現地特派員の1人)
松坂はバリティックの経験豊富な配球術に救われてきたが、そのベテラン捕手称賛の言動は、エスポシート、サルタラマキーア、ワグナーなど他捕手陣への批判と捉えられてきた。些細な行き違いが重なっただけかもしれないが、レッドソックスは松坂を「扱いにくい選手」とし、また、松坂も居心地の悪さを感じてきたという。
「松坂は立ち上がりが悪く、試合序盤に失点する悪癖がありました。西武時代からそういう傾向があったとも聞いていますが…。松坂が投げる試合は先に点を取られて追い掛ける展開になるので、野手陣も『やりにくい投手』と見ていました」(前出・米メディア陣の1人)
レッドソックスは表向きこそ、松坂の回復と早期復活を口にしていたが、「いないもの」と判断している。
松坂も反省しなければならない点はたくさんありそうだが、06年オフ、複数の球団と交渉することができていたら、別の球団を選択していただろう。
「松坂が戦線を離脱した翌日から、日本人メディアの姿も見られなくなりました」(同)
チームに馴染めなかったことや、メジャー式の調整方法を修得できなかった非は、松坂にある。岡島が非情なマイナー降格を受けているだけに、残された田澤純一の今後が気掛かりである…。
※外国人選手名のカタカナ表記は月刊メジャー・リーグ(ベースボール・マガジン社)を参考にいたしました。