清明祭こと、「シーミー」は沖縄3大行事の一つで、旧暦の3月吉日に行われます。沖縄の行事が基本、旧暦に即しているのは連載第5回「正月は旧暦で」(http://npn.co.jp/article/detail/21826991/ )で紹介した通りです。「清明」自体は季節を表す言葉の一つでして、「春分」の次に来る期間、植物が活動を始める時期となります。本土のお花見シーズンと丁度一致しますね。
今年の清明は4月5日からで、「清明祭」はそれから15日以内の吉日に行います。現在では休日に行われる事が多く、今年の清明祭は日曜日の4月10日がピークだった模様です。
「清明祭」は、もともと中国から伝わった風習です。前述の期間に親戚が集まって先祖のお墓に参り、周りを掃除した後にお線香や紙銭(※)を焚き、お花や重箱に詰めた料理などをお供えして供養します。お供えした料理は供養の後、親戚一同で頂きます。
「お墓に親戚一同が集まる」と聞くと、本土の人は「?」となるかもしれません。沖縄のお墓は亀甲墓(別名を門中墓)という家の形をした大きなものでして、ちょっとした小屋やトーチカみたいな形をしています。で、このお墓の前に玄関のような広いスペースがあり、そこに集まって供養する訳です。
画像は紙銭や線香などの、清明祭で用いられる道具の色々です。写真の、左手前に積んである物が「紙銭」、右手前に積んである黒い物や立ててある濃緑色の棒状の物が「線香」です。沖縄の線香は黒く、6本の細い線香がくっついて板状になっているものが一般的です。
※紙銭:『ウチカビ』と言い、紙幣よりひとまわり大きい黄色い厚手の和紙に、◎の模様が浮き彫りで入っている。中国では死者もお金を使うと考えられており、紙銭のような偽物のお金を一緒に埋葬する。中国の文化を色濃く受け継いだ沖縄にも、この風習が伝わったと考えられる。
本土で言う夏の『お盆』を春にやっているように考えると解りやすいかも知れませんね。ただ、夏は夏でちゃんと『旧盆』と言う名前の通り、やはり旧暦にちゃんとやりますから、春のお彼岸の規模を大きくした感じ、と言った方がいいでしょうか。
いずれにしても、沖縄の人の『先祖』を敬い、『家』を大事にする考えがよく出ている行事であるといえます。
本土の方々は、この時期に沖縄に来て『お墓の前にピクニックシート広げてお弁当(=お供え物)を食べている人たち』を見ても、驚かないでくださいね(もちろん、お墓の真ん前ではなく、別の場所で食べるケースも多くあります)。
(黒松三太夫 山口敏太郎事務所)