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広島、緒方監督が慰留を振り切って退任を決意したワケ あのレジェンドが危惧した「弱点」も原因?

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緒方孝市監督

 広島・緒方孝市監督(50)の退任が正式に発表された(10月1日)。松田元オーナーは「無理を言うのは酷」と慰留に努めたことも明かしていたが、緒方監督の決心は固かった。

 「8月に入ってから敗因分析の調査も始まりました。3番バッターのバティスタがドーピング検査に引っかかったのもちょうどそのころでした。言いたくないが、やはり、昨季まで3番を任せていた丸佳浩が抜けたのは大きい。その穴が最後まで埋まりませんでした」(地元メディア)

 しかし、球団は打線低迷だけが敗因とは見ていなかった。敗因の調査結果として、「チームの雰囲気が良くない」とも報告されていたのだ。6月の“ビンタ事件”である。

 緒方監督は全力疾走を怠った野間峻祥(26)を叱責した(6月30日)。非は緩慢なプレーをした野間にある。手を挙げた緒方監督も悪いが、試合後、監督室に呼び出し、他ナインの見ていないところでの“愛のムチ”だった。とはいえ、こういうウワサはすぐに広まる。監督室で何が起きていたのか、マスコミも嗅ぎまわっていることが分かり、球団はあえて公表し、行き過ぎた指導にもペナルティを科した。

 緒方監督は全選手の前で謝罪したが、チームの雰囲気は元には戻らなかった。

 「緒方監督が指揮官に就任して最初のドラフト会議で1位指名したのが、野間。本当に期待していました」(前出・同)

 また、フロントとの間でも“行き違い”があったようだ。

 「佐々岡真司投手コーチ(52)が一軍担当に配置換えされるのは聞いていなかったようです。緒方監督も『監督の5年周期』を知っていたので、ピンときたみたい。それと、丸の流出ですよ」(前出・球界関係者)

 今春のキャンプで投手陣を統括していたのは、佐々岡コーチだった。練習メニュー、登板日程の調整において、緒方監督もノータッチだった。先発、リリーフともに苦しんだ今季、佐々岡コーチにも責任の一端はある。その佐々岡コーチが後任の最有力とは皮肉な限りだ。

 ビンタ事件以降、チームの雰囲気が悪くなった。そのことは緒方監督も察しており、“潮時”と思っていたのではないだろうか。

 広島のレジェンド・衣笠祥雄氏(故人)が、生前、こんなことを話してくれた。

 氏の現役最後となった1987年、新人として入団してきたのが緒方監督だった。球団は高橋慶彦氏の後継者として大きな期待を寄せていた。衣笠氏は「そんなに凄いヤツが入ってきたのか?」と春季キャンプのキャッチボールのパートナーに指名したのだが、緒方監督は緊張し、暴投を連発してしまった。連続試合出場の記録を更新していた鉄人に対し、高卒の新人に「緊張するな」と言う方が無理である。しかし、衣笠氏はこうも感じていたそうだ。「小さなミスなのに気にしすぎ。たった一つのミスで萎縮し、瓦解してしまうような弱さもある」と…。

 歳月は流れ、“ビビリの新人”は指揮官となり、球団史上初となる3連覇を成し遂げた。しかし、ナーバスな一面は変わらなかったようである。(スポーツライター・飯山満)

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