9月8日、NHK・松本正之会長が定例会見を開き、7月24日の地上デジタル放送への完全移行に伴い、受信契約解約の申し出が、8月末までに約9万件にも上ったことを明らかにした。この機にテレビを見ないことを決めたり、地デジ化に対応できない経済的事情がある人が多いと推測される。
現在、NHKでは解約の申し出があった人について、カーナビやワンセグでの視聴がないかなどの確認作業を進めており、最終的な解約者数は現段階では不明だが、松本会長は10万件を超えるとの見通しを示した。
前年度(10年)、NHKの受信料収入は約6500億円で過去最高だった。今年度は40万件の契約者増をもくろみ、受信料収入は6680億円を見込んでいた。
受信料は地上契約と衛星(BS)契約に分かれ、2カ月払い、6カ月払い、12カ月払いがある。一般家庭では地上契約の2カ月払いだと、受信料は2690円で、年間だと1万6140円。仮に解約希望が予想される10万人の契約パターンがこれだったとしたら、16億1400万円もの減収となる。さらに、2カ月払いで4580円である衛星契約者が解約すれば、減収幅は大きくなる。これを、前年度の受信料収入と対比すると、わずかに0.2%に過ぎず、経営をひどく圧迫するほどの額ではない。
しかし、40万件の契約者増を掲げていたNHKにとっては、10万件にも及ぶ解約申し出は想定外で、事業計画を大きく修正せざるを得ない事態となった。松本会長は「(契約者増を見込んだ40万の)4分の1に当たるかなり大きな数字、影響だと思っている」と肩を落とした。
(蔵元英二)