この『差』はどうして生じたのだろう。「カッコイイか、カッコ悪いか」の違いである。もっと言えば、メジャー球団のエンブレムにはファッションセンスを感じるが、日本の球団のそれは“マンガチック”なのだ。『球団エンブレム』について、真剣に取り組んだ球団がある。北海道日本ハムファイターズだ。
ファイターズが本拠地を札幌に移し、最初のシーズンを戦い終えた04年オフ、「地域密着の手応え」について取材した。札幌に足を運び、最初に驚いたのはファイターズの野球帽やレプリカシャツ、ジャンバーなどを着用する市民を多く見掛けたこと。老若男女を問わず、でをある。対応してくれた球団職員は「球団エンブレムを『1つの媒体』だと思っています」と、答えてくれた。
その球団エンブレムは現在も使用されている。札幌移転に伴ってリニューアルされたが、シアトルマリナーズのエンブレムを手掛けたSME社(米国)に制作を依頼した。
12球団の各エンブレムを思い出してほしい。マンガチックでないのは、日本ハム球団だけだ。球団のユニフォームやロゴ、エンブレムマークが新調されるのは『球団創立何周年』などの節目だが、実は代理店に丸投げし、「出来上がったいくつかのサンプルから球団が選ぶ」というやり方が多い。SME社に制作依頼した際、日本ハム球団もこうした日本式の慣例をイメージしていたと言う。しかし、SMEはそれを許さなかった。「ファイターズとは?」「北海道とは?」の詳細なイメージ説明を求められた。さらに、デザインに関する議論も重ねされた。
しかし、その制作費は有名球団の4分1、経費節減に厳しい球団の半分程度だった。“割安”である。完成までにはかなりの日時を費やしたが、完成まで苦労した分、『愛着』も強い。新エンブレムを遣ったグッズ等の売上げは東京ドーム時代の1000%増。もちろん、移籍元年の物珍しさもあっただろう。とはいえ、『愛着』が強い分、たとえば100個の注文があったショップに対し、「150個は売れる!」と自信を持って言える。
グッズ販売を外部に丸投げしている球団もあるらしいが…。
ダイエー時代のホークスが先駆けとなるが、ファイターズも地域密着の一環で、市内の飲食店等に「日本ハムが勝利した日は何でもいいから、お客さんへのサービスをして下さい」と頼んでまわった。快諾してくれた店にはそのエンブレムマークのシールが貼られた。エンブレムマークの普及が札幌市民への浸透と定着も早めた。札幌ドームでの主催ゲーム中、球団職員は観客席後方からファンの観察も行っていた。移籍元年の04年の観客動員数(主催試合)は161万6000人。昨季は194万5944人。クライマックスシリーズ進出は逃しても、04年よりも増えているのだ。フロントの熱意とは…。自軍のエンブレムマークに誇りと自信を持てるかどうか、そして、『1つの媒体』として発展させられるか否かが重要だ。(了/スポーツライター・美山和也)
※本編は『誰も触れない スポーツ界光と影』(別冊宝島)にある「日本ハム対コンサドーレ札幌」(美山和也著)を一部参考といたしました。