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キャバ嬢が切れた瞬間14 〜貸して貸してキャバ嬢(後編)〜

 「ご指名ありがとうございます!」といい終わったと同時に、「菅野さぁぁーん」といって走ってきたのは、ヒメちゃんだった。え、だって今日ユカちゃんいるし、ヒメちゃん指名の新卒くんも一緒にいるのに…。

 これにはユカちゃんも開いた口が塞がらなかった。「なんで?」って顔をして待機席でこっちを見ていた。菅野さんはヒメちゃんに指名替えをして、新卒くんは上司である菅野さんが自分のお気に入りのヒメちゃんを指名したので(というか、元々そこまで気に入ってたわけでもないらしいと後で奥田さんから聞いた)フリーで入ったらしく、先週入った新人の子が席についた。閉店後、ユカちゃんは案の定怒っていて、菅野さんとのアフターに出かけようとしていたヒメちゃんに掴み掛り、「なんでいつのまにあんたの客になってるのよ!」と大声を張り上げていた。

 ヒメちゃんはけろっとして「だって、あなたがちゃんと相手してあげなかったからだよぉ。お店だって休んでたじゃん、その間ヒメは確かに菅野さんを借りてたよ? もちろんユカちゃんが帰ってきたら返すつもりだったし。けど、菅野さんがユカちゃんいてもヒメのこと選んだんだからしょうがないじゃぁん?」と答えた。

 理屈では確かにヒメちゃんの言うとおりなのだが、しかし一言余計だった。「別に、ヒメはいつでも菅野さんのこと返してあげるつもりだよぉ? でも菅野さんがヒメがいいっていうんだから、返しようがないよねぇ?」ユカちゃんは、顔を真っ赤にして更衣室の椅子を勢いよく蹴倒してそのまま送りの車に乗りこんだ。

 それ以来、この二人はお店は辞めこそしなかったものの、それぞれ別な子とつるむようになって、2度と一緒に席につくことはなかった。更に相変わらず菅野さんは、ヒメちゃん指名でお店によく現れて、ヒメちゃんとこれ見よがしにべたべたしてるのをユカちゃんに見せつけていた。

 後で聞いたのだけど、ユカちゃんは菅野さんのことを常々ヒメちゃんに相談していたらしく、「どうやったら嫌な思いをさせずに楽しく過ごしていけるのかな」と彼女なりに考えていたらしい。でも、その裏でヒメちゃんはお客さんをかすめとるチャンスだと思っていた。それでユカちゃんのいない隙に、あることないことを吹き込んでうまいこと指名替えに持って行った…。というのが真実だった。

 しかし、その後、菅野さんはストーカー化してしまい、ヒメちゃんの家まで突き止めて押し入り、「一緒になってくれないなら死んでやる」と言い、部屋で手首を切って夕方のニュースで取り上げられてしまった。ヒメちゃんは半狂乱になりながら、ユカちゃんに「あんなのはヒメの客じゃないわよ、あんたに返すから!」と自分勝手なことを叫んでいた。

 お客さんを盗られ、そして一方的に突っ返されたユカちゃんは怒りが抑えきれなくなったのか、ヒメちゃんに馬乗りになって撲殺一歩手前状態に。

 こんなことになってしまったものだから、わたし指名の奥田さんまでうちの店にきずらくなって、とうとう音信不通に…。
 わたしにまでひどいとばっちり…! 勘弁してよね!

文・二ノ宮さな…OL、キャバクラ嬢を経てライターに。広報誌からBL同人誌など幅広いジャンルを手がける。風水、タロット、ダウジングのプロフェッショナルでもある。ツイッターは@llsanachanll

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