「8番三塁で、新しい選手が出て来てほしい」−−。原辰徳監督は元旦付けの系列新聞インタビューで、2010年のチーム構想をそう語っていた。具体的な選手名こそ出さなかったが、大田の抜擢を直感した野球関係者は少なくない。
「大田? 使わざるを得ないでしょう」
巨人関係者の1人がそう言う。
使わざるを得ない理由とは、『背番号55』を与えたように、大田を将来のスター候補、打線の中核を担う逸材と見ているからだ。
「松井もプロ2年目にレギュラーポジションを獲得し、3年目にはベストナインに選出されています。ONはもちろんだが、清原、松坂などスターになる選手は1年目からそれなりの成績を残している。イチローは例外中の例外!」(前出・同)
つまり、球界のスターは“早熟”だというわけだ。大田をスターに育てたいのだろう。昨秋、その大田に「セカンドの練習をさせる」との情報も飛び交っていた。セカンドは選手層の厚い巨人において、唯一、レギュラーが決まっていないポジションだ。近代野球において、「二塁手の守備力はチームの勝敗に直結する」とも言われている。守備面での負担、打撃への悪影響を考えれば得策ではないが、「大田の二塁挑戦は本当に検討されていた」というから、巨人首脳陣がいかに早く使いたいと思っているかが分かる。
その大田がジャイアンツ球場で小笠原道大を質問責めにしていた。詳細は聞き取れなかったが、グラブを指して話し込んでいた。大田は『小笠原モデル』の新グラブ(三塁手用)をこの自主トレから使用しているともいうので、三塁守備に関する助言も仰いでいたのだろう。
「原構想では小笠原を一塁に固定するつもりです。ラミレスは『一塁も守れる』程度にしておき、状況に応じて、出場選手の守備位置を替えていくのでしょう」(前出・同)
大田が三塁で使えるメドが立てば、原監督の選択肢は確実に増える。ラミレスが一塁の守備に入るとき、ドライチの長野義久を使うつもりなのだろう。大田は原巨人の起爆剤になれるか…。言い方を変えれば、ラミレス(35)、小笠原(36)のクリーンアップの後継者育成が遅れているからだろう。