2020年東京五輪・パラリンピックの開催期間前後に神宮球場が「使用中止」となる。メインスタジアムの新国立競技場と隣接しているため、大会期間中は関係者や来賓の待機所、資材置き場として使われる。現時点では“予定”だが、五輪組織委員会は取り消していない。神宮球場を本拠地とするヤクルト球団も代替球場の確保に奔走しているが、五輪期間中、同球場を使用しているのはプロ野球だけではない。高校野球の東京都大会、大学野球なども奔走しており、その一環で、「東京ドームで高校野球の東京都予選を」の提案がされたのである。
「東京都の高野連は今年に入ってすぐ、関係各位に打診していました」(都内高校野球指導者)
一時期、こんなウワサもあった。東西東京都予選の一部を近郊の千葉、神奈川、埼玉で行う案もある、と――。
その真偽はともかく、ヤクルト球団でさえ代替球場をいまだ確保できていないのだから、高野連もそれくらい困っているのだろう。そこで急浮上してきたのが東京ドーム使用案である。都高野連の武井克時理事長は東京五輪組織委員会にも出向き、「1回戦から東京ドームを使用できないか」と申し入れた。今年5月、高野連と朝日新聞社による「功労者表彰」に選出されたときも、同理事長は「決勝戦をやる場所がない。大会期間中、東京ドームを借り切ってほしいと大会組織委には伝えている」と話している。
その都度、言葉を変えているが、東京ドームで高校野球の決勝戦が行われれば、史上初。「炎天下=高校野球」のイメージも変えてしまうかもしれない。
「7月の東京ドームは社会人・都市対抗野球の会場となるので、都高野連の要望通りにはならない可能性のほうが高い。社会人、高校野球、プロ野球で話し合い、棲み分けることになりそう」(アマチュア球界要人)
巨人も例年以上の地方遠征を強いられそうだ。同じ東京の球団である以上、ヤクルトと東京ドームを棲み分けなければならない。ドーム球場は天候に左右されないので、社会人、高校野球がSOSを出してきたのは当然のことかもしれない。
「ヤクルトは札幌ドームにも打診を入れたみたいですが、日本ハムとの棲み分け、さらに五輪サッカーの会場にもなるため、札幌市は短期間しか貸せないとの返答をしました。12球団は五輪野球のため、主力選手も派遣しなければなりません。主力を失い、球場も確保できない、そのうえ、高校野球にも配慮しなければならないのですから、五輪期間はかなり苦労させられそうです」(前出・スポーツ紙記者)
高校野球といえば、吹奏楽部、チアガールなどによる華やかな応援でも有名だ。しかし、ドーム球場では大音量となってしまう。そうなると、試合中の選手間の声掛けにも影響する。こうした球場の特徴を考え、規制が加えられる可能性もあり、「高校野球らしくない」と思うファンも出るだろう。
もっとも、オトナの偏見かもしれないが、炎天下で熱中症を気にしながらやるよりも、快適なドーム球場のほうが好プレーも期待できるのではないだろうか。2020年、高校野球に新しい歴史が刻まれ、東京ドームはフル稼働となりそうだ。(スポーツライター・飯山満)