−− やはりこれからの映像の世界は、3Dが主流になってくるんですかね。
黒木 わかりませんが、3Dがより身近にはなってくるとは思います。3Dテレビもそうですし、最近じゃ3Dパソコンも出てますしね。それに最近じゃYouTubeの3Dのサービスも始まりましたし(※注:YouTubeを3Dで閲覧するには、3Dパソコンが必要)。
−− 11月30日発売の御社の『本格3D鉄道紀行』、売れ行きはいかがですか?
黒木 まあ、思った以上は売れていますよ(笑)。3Dテレビがもっと普及すればいいんですが…。
−− 3Dの映像を撮るには、3D用のカメラが必要になるんですか?
黒木 様々な方法がありますが、3D専用カメラで撮る方が綺麗には撮れると思います。ウチは6月ぐらいに、あるメーカーさんから3Dカメラを拝借しまして、それで8月に『本格3D鉄道紀行』を作ったんです。…ちなみに制作費はかなりかかりましたね(笑)。
−− カメラが高いということですか?
黒木 いえ、それよりも編集が大変なんですね。作業的にも経費的にも。3Dは2枚の映像を重ねるんです。それで右目用の映像は右目に、左目用の映像は左目に届けるんですが、うまく重ならないと、横ズレ・軸ズレなどが起きて3D視が難しくなります。そうならないように丁寧に3D映像を作って行くと手間と時間が、もの凄くかかるんですね。なので、普通の映像の編集と比べて、経費もその分かさんでしまうと(苦笑)。
−− 映像を2枚重ねることに手間がかかるということは、経費も倍ということですか?
黒木 いえいえ、もうそれ以上…、私たちの場合は5〜6倍かかりましたね。
−− ええ〜、それは大変ですね! では我々が普段、目にしている3Dの映像は、制作スタッフの方々の大変な苦労があって、ということですね。
黒木 そうですね、いま世に出ている3D作品というと、大規模な制作費をかけられるハリウッドの大作ばかりですからね。『アバター』に『アリス・イン・ワンダーランド』に…。うちもそれほど大規模ではないですが、そこそこかかりました。ただ、3Dの映像って、基本的にテレビ向きではないんですよ。
−− テレビ向きではないとは、どういうことですか?
黒木 3D映像にも何種類かありまして、最も高画質なのは、ハイビジョンを2枚重ねるものでフレームシーケンシャル方式といいます。しかし現行のテレビはハイビジョン1枚分の情報量しか乗せられないので、フレームシーケンシャル方式の3D映像は、放送波に乗せられないんです。
そこで、サイドバイサイドという方式がありまして、そっちだとフレームシーケンシャルの半分の解像度になるんですが、放送でも流せます。テレビメーカーの人とかからは異論が出てしまうかもしれませんが、個人的にはサイドバイサイド方式でも十分、3Dとして綺麗な映像だと思います。ちなみに『本格3D鉄道紀行』はサイドバイサイド方式ですが、かなり丁寧に作ったのでまずは観ていただきたいです。
−− 特に今回、この作品でアピールしたいポイントはどこですか?
黒木 やはり圧倒的な立体感ですね。鉄道で活かせていると思います。
−− 3Dで次回作は、何かお考えですか?
黒木、いま、イースター島を撮っています。イースター島に8年ほど住んでいる日本人の公認ガイドの方がいるんですけど、彼を主人公にイースター島の楽しさを紹介するDVDを作っています。その中で特典映像として民生機ではあるんですが3Dカメラでいろいろ撮ってますね。
−− 飛び出すモアイ像、いいですねえ(笑)。楽しみにしてます。
最後に、御社・十影堂さんのこともお伺いしたいのですが、3D以外の他の映像のお仕事は、どんなことをされていますか?
黒木 主にCS放送を手がけています。他にも天体観測に、心霊、UMAと、いろいろな映像素材を扱っています。弊社は企画から撮影・編集を経て納品まで、すべて完パケで映像を制作します。私も構成作家ですし、弊社は構成作家のネットワークを幅広く持っていますので、企画から作れるんですよ。それに弊社は日本全国のカメラマンと契約してますので、地方ロケを格安で撮れるという強みもあります(笑)。
とにかく、これからも自作の映像をどんどん発信していきたいですね。
−− 今日はありがとうございました。
(※人物写真:左・十影堂社長・黒木さん、右・十影堂広報・大江智宏さん)
(山口敏太郎事務所)
参照 山口敏太郎公式ブログ「妖怪王」
http://blog.goo.ne.jp/youkaiou/