予算委員会の質問に立った岡田議員は冒頭で、「自民党大会で総理は『あの悪夢のような民主党政権が誕生した』という風に言われました。もちろん、民主党政権時代の反省は我々にあります。しかし、政党政治において、頭から相手を否定して議論が成り立つのか。私たちは政権時代に、その前の自民党の歴代政権の重荷も背負いながら、政権運営をやってきました。撤回を求めます」と安倍総理が10日の自民党の党大会で演説した内容について、撤回を求める。
これについて、安倍総理は「先週からずっと議論をしている」と述べた上で、「私は自民党総裁としてそう考えている。そう考えているということを述べる自由はまさに言論の自由である」と主張。
また、「少なくとも、バラ色の民主党政権でなかったことは事実なんだろうなあと言わざるを得ないわけであります」と断言。そして、自民党は政権を失った際、有権者の声に耳を傾け生まれ変わろうとしたとし、「皆さん悪夢でなかった。それを否定しろとおっしゃるんですが、なぜ民主党という名前を変えたんですか?」と政権交代後、「民進党」と名前を変えた民主党政権に疑問符をつける。
さらに安倍総理は、「自民党っていう名前を変えようとは思わなかった。私たち自身が反省して生まれ変わらなければならないという大きな決意をしたんです。名前のせいで負けたわけではないんですよ。皆さんは民主党っていう名前のイメージが悪いから、おそらく名前を変えられたんだろうと推測する人、たくさんいますよ。そういう面では皆さんもそう思ってるんじゃないですか」と問いかける。しかし、岡田議員は「自民党政権の重荷を背負って運営した部分もある」とし、「自民党政権も悪い」と繰り返し、名前を変更したことについては言及せず。
その上で、「本当に自民党政権時代の反省をしたというのであれば、あんな言葉出て来ないはずですよ。一方的に民主党政権レッテル貼りしてますけれども、あなたたちがやったことで私たちも苦しんだこともある。そういったことについて謙虚な気持ちで、総理ですから発言してもらいたいと思うんです。今の発言全く了解できませんよ、取り消しなさい」と、発言の取り消しを迫った。
これについて、安倍総理は「取り消しなさいといわれても取り消しません」と断固拒否。その後、岡田議員は民主党政権時代の最大の失敗は「原発事故の対応」とし、「歴代の自民党政権に(原発事故の)責任はないのか」となぜか自民党政権の原発政策の責任を追及する。
安倍総理は自民党にも責任はあるとしながらも、「(悪夢のような民主党政権発言は)原発事故ではなく経済政策のこと」とし、民主党政権時代よりも有効求人倍率が改善していると主張。その上で、「批判するなというのはおかしいのでは」と岡田議員の威圧的な発言に苦言を呈す。
しかし、岡田議員は「批判するなと言ってるのではなく、全否定するようなレッテル貼りはやめろと言っている」と発言。そして、有効求人倍率には触れず、原発政策について総理を糾弾し続ける。
困惑気味の安倍総理は、「全否定するなとおっしゃいますがね、例えば採決の時にですね、『アベ政治は許さない』というプラカードをみんなで持ったのはどこの党の皆さんですか? 名前が変わったらそれがもうなくなったということになるんですか」と指摘。岡田議員はそれに反論せず、原発事故の責任にこだわり、議論は堂々巡りに。
安倍総理は「(党大会の発言は)経済政策を批判している。原発の問題は一言も言っていない」「若い皆さんが働きたいと思う人が、仕事があるという状況を作ることが政治の大きな責任だと思っている。(民主党政権時代の有効求人倍率の低さという)この事実を受け止めないのなら、全く反省してないと言わざるを得ないんじゃないですか」と答弁した。
岡田議員はそれでも経済政策については全く触れず、「聞いてもいないことを長々と答弁している」と糾弾し、「民主主義はお互いを全否定しては成り立たない。総理の党大会の言い方は全否定に近い言い方」と、「アベ政治は許さない」というプラカードを掲げたことには触れず、安倍総理の発言に不快感を示した。
岡田議員は民主党・野田政権時代に副総理を務めただけに、安倍総理の「悪夢のような民主党政権」発言が気に入らなかったようで、「撤回」させたかった様子。しかし、ネットユーザーからは「予算委員会はそんなことを議論する場ではない」「国会の場で言及することで自身に責任がないとアピールしたいとしか思えない」「時間の無駄」「予算をしっかり議論してほしい」など、批判が噴出。
さらに、岡田議員は野田政権時代に消費増税を決めた際の副総理だっただけに「消費増税を決めた人間が言うな」「経済政策や社会保障政策は反省しないのか」「結局消費増税で手を組んだではないか」という指摘もあった。
多くの日本国民は、岡田議員個人が不愉快と感じた一件を予算委員会で問題視し、撤回させようとするような姿勢について、不適当と感じたようだ。
本来予算を審議するべき予算委員会で、国会議員が総理といえども一個人の見解に噛みつき、半ば口喧嘩のようなやり取りを繰り広げる。そのような様子こそが国民にとって「悪夢のよう」なのかもしれない。
文・神代恭介