公海上の海賊行為は深刻な問題であり、各国の悩みの種となっている。特に東アフリカの沿岸地域、ソマリア沖では海賊による襲撃事件が頻発。現在、もっとも危険な海域として屈強な海の男たちでさえ、真剣に恐れているのである。商社に勤務するA氏が語る。
「地元の漁師が武装化して海賊になっています。ただ、漁師といってもソマリアでは激しい内戦が続き民衆が武装化。非常に統制の取れた武装集団になっている。国連軍などが海賊に対処していますが、海賊は堂々と応戦。最先端装備の軍隊が、海賊の小回りの利いたゲリラ戦術に振り回されているというのが現状です」
高度に武装化した海賊は地元の利を生かし、軍隊をも手玉に取っているというのだ。
「ソマリア沖の海賊の目的は身代金。略奪行為や人質への虐待行為はありません」(A氏)
ソマリアの内戦では民族同士で有史以来、最悪の大虐殺が繰げられたが、この海賊行為ではビジネスに徹しているらしい。
「人質ビジネスがもたらす利益は莫大です。年間1億ドル(約100億円)、闇に葬られた事件を含めればその10倍以上の金銭が海賊に渡っていると思われます」(同)
さらに、そのビジネスは多角化しつつある。海賊とつながりのある警備会社や通行の安全を保証するブローカーなど、悪のスパイラルが形成されつつあるというのだ。
NMRでは、ある極秘ルートから恐るべき情報を手に入れた。2007年から急増したソマリア沖の海賊行為は、今年に入りその手段や交渉に変化が現われ始めた。それは海賊が高度に組織化している事実を示す。背景には、ソマリアに海賊王が誕生した可能性があるというのだ。
もともとソマリアの武装集団は、イスラム過激派の影響を多大に受けている。この海賊王がイスラム過激派と深い関わりがあるとしたら…。現在はビジネスに徹している海賊集団に宗教的大義が加われば、その脅威は形を変え凶悪なテロ集団へ変貌するとも限らない。
ソマリア沖に首領が誕生したというニュースは今後の平和維持活動に大きな影響を与える大きなニュースといえよう。組織への対応を本格化しなければ、新たな惨劇につながる危険性は非常に高いと言える。ソマリア沖を注意して監視しなければいけないだろう。