25歳を機に所信表明をした興毅は、「5階級を制覇して、30歳で引退」を掲げた。興毅のプランによると、27歳までに1階級下のスーパーフライ級か1階級上のスーパーバンタム級で4階級制覇。そして、30歳までにスーパーバンタム級のさらに上のフェザー級までを視野に入れて5階級を制することが目標だという。
そもそも、すでに3階級を制した興毅は、日本人としては史上初の快挙であった。さらに、その上を行く4階級、5階級を制するとなると、これはもう国内では前人未到の記録となる。
しかしながら、周囲はあまりにも冷ややかだ。というのは、亀田陣営の世界王座奪取への方法論に、以前から疑問の声が多かったからだ。これまで、興毅はライトフライ級、フライ級、そして現在保持するバンタム級を制したが、3階級中、2回は王座決定戦での獲得。バンタム級に関しては、昨年12・26さいたまで当時ランキング5位のアレクサンドル・ムニョス(ベネズエラ)を下して王座を奪取した。世界王座は真のチャンピオンを破って獲得してこそ、価値があるもの。ランキング1位対2位の王座決定戦ならともかく、5位の選手を下して奪取した王座が、どれほどの価値があるのかはなはだ疑問なのだ。
しかも、興毅はバンタム級王座奪取後、V1戦(5・7大阪)はランク14位、V2戦(8・31日本武道館)はランク8位と下位の選手とばかり防衛戦を行ってきた。12・7大阪でのV3戦もランク12位のマリオ・マシアス(26=メキシコ)で、“勝てる相手”としか世界戦をやらないのは、もはや業界の定説となっている。むろん、それを容認しているWBAにも問題があるのはいうまでもない。2月にWBC世界ミニマム級王座を奪取した井岡一翔(22=井岡)が、8・10後楽園での初防衛戦で、堂々とランク1位の選手の挑戦を退けたのとは、あまりにも対照的だ。
スポーツライターのA氏は「亀田陣営の方法論なら4階級は楽勝でしょう。また、王座決定戦や暫定王座を狙えば、いいのですから。ただ、大きく階級を上げての5階級目となると、パンチの重さも違いますので、苦労はするでしょう。しかし、亀田陣営の手法をもってすれば、5階級制覇も夢ではありません。極端な話、なにかと亀田陣営に甘いWBAなら、ランク10位の選手との王座決定戦なんてことも認めるかもしれませんから」と語る。
国内史上初の3階級を制しても、賛否両論が渦巻いた興毅。その方法論を変えない限り、たとえ国内では前人未到の5階級制覇を達成しても、業界内では冷ややかな反応に終わるであろう。
(落合一郎)