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不沈猫サムは実在したのか?(4)

 戦場における信じがたい幸運と不運は日常からかけ離れた不思議な魅力を持ち、特に九死に一生を得た物語は「感動的なえぇ話」として、ネットでもソーシャルメディアなどを通じて拡散し、虚実が混ざって定着することも少なくない。この不沈猫サムもまた、そういった「えぇ話」のひとつである。不沈猫サムはペットとして乗り組んでいたドイツの戦艦ビスマルクが撃沈され、漂流していたところをイギリス海軍の駆逐艦コサックに拾われて、そのまま再びペットとなった。

 しかしその駆逐艦コサックも撃沈され、今度は同じイギリスの空母アーク・ロイアルへ拾われたものの、空母も撃沈されて退艦を余儀なくされ、最終的には陸上の基地で余生を送ったとされる。まさしく九死に一生を得つつ、同時に不吉な影を併せ持つ不思議な猫として、最近ではネットなどでも取り上げられることが多い。

 ところが、この「えぇ話」には数多くの疑問点があり、現在では都市伝説とされることも少なくないのだ。

 簡単に列挙すると、ドイツ側には戦艦ビスマルクで猫を飼っていたとの記録や証言がなく、駆逐艦コサックは戦艦沈没後にドイツの生存者も遺体も収容していない。また、駆逐艦コサックが救助したのは「トラジマ猫」だが、空母アーク・ロイアルの物語に登場するのは白黒ぶちの「ハチワレ猫」である。猫の性別など、具体的な特徴が全くわからない。そして、駆逐艦コサックが大西洋で沈没した時、空母アーク・ロイアルは地中海のジブラルタルで自己整備中だったため、猫を救助する可能性は全くないのだ。

 とはいえ、駆逐艦コサックの生存者は全てコルベット艦ジョンキルへ収容されたので、もしも乗り組んでいた猫が生存していれば、救助されてジブラルタル港へ送られたであろう。また、空母アーク・ロイアルも沈没まで時間的な余裕があり、生存者はかなり整然と退艦しているので、猫が乗っていれば助かった可能性は高い。ただし、いずれも乗っていればの話である。

 サムに関する情報は駆逐艦コサックの「トラジマ猫」と、グリニッチの国立海事博物館で「ビスマルクの猫・オスカー」として展示された白黒ぶち「ハチワレ猫」の肖像画程度で、もしもそれぞれの猫が実在していたとしても、異なる2匹の猫であったのではなかろうか?

 戦史に詳しい英海軍のアンソニー・デイビス少将が「事実が『えぇ話』を捨てさせることは絶対にない」と語ったように、不沈猫サムの物語はこれからも生き続けるだろう。そして、真の謎は「不沈猫の物語がいつ、何処で生まれたのか?」なのかもしれない。(了)

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