乗客としては手を挙げているのだから、止まってもらいたいと考えるのは当然のことで、通常拒絶することはできないが、道路運送法第13条に定められている以下の例外事項に該当する場合は、拒否することができる。
道路運送法第十三条 一般旅客自動車運送事業者(一般貸切旅客自動車運送事業者を除く。次条において同じ。)は、次の場合を除いては、運送の引受けを拒絶してはならない。
一 当該運送の申込みが第十一条第一項の規定により認可を受けた運送約款(標準運送約款と同一の運送約款を定めているときは、当該運送約款)によらないものであるとき。
二 当該運送に適する設備がないとき。
三 当該運送に関し申込者から特別の負担を求められたとき。
四 当該運送が法令の規定又は公の秩序若しくは善良の風俗に反するものであるとき。
五 天災その他やむを得ない事由による運送上の支障があるとき。
六 前各号に掲げる場合のほか、国土交通省令で定める正当な事由があるとき。
この法律を理解せず、ありえない状態でタクシーに乗車しようとした上、拒否した運転手を殴るという事件が2018年、兵庫県三木市で発生している。
事件が発生したのは2018年10月13日。2人の男がスナックで酒を飲んだ後、タクシーを呼び帰宅しようとする。運転手(71)がドアを開けると、男1人から猛烈な脱糞臭がすることに気が付く。これは明らかに乗車拒否ができる条件を満たしており、運転手が注意を与える。漏らしている状態で乗せれば、後の営業に支障が出ることになる。当然の行動だ。
すると、脱糞していない方の男(64)が逆上し、運転手の顔を複数回殴打。鼻血を出させるなどの被害を与え、傷害容疑で逮捕された。60代でありながら脱糞すること、そしてタクシーに乗ろうとして拒否され、連れの男が暴力を振るうのもありえない。
この幼稚な事件は全国へと拡散され、犯人と脱糞した男は笑い者となった。脱糞は致し方ない部分もあるのだろうが、その状態でタクシーに乗ろうとする行為は、どう考えても不適切だ。
※年齢はいずれも当時
文 櫻井哲夫