そんなコンビニエンスストアで、許せないほど悪質なクレームを付け、金品を奪おうとする事件が2014年に大阪府茨木市で発生した。
事件のきっかけは、当時39歳の女が暴走族風の男たちとコンビニエンスストアを訪れ、対応した店長とトラブルになったこと。これも女を始めとする人間たちの無茶苦茶な行動に、当時25歳の店長が拒否したことが理由だった。詳細は不明だが、ほぼ強盗に近い行為をしていたものとみられている。
すると、今度は当時39歳の男(無職)が抗議に来店。動画撮影したことに気がついた店長が濡れた手で携帯電話を取り上げたことに激怒すると、数時間後に当時46歳の男を連れ、女らとともに店を訪れる。
そして、一味の一人が反社会的勢力との繋がりを口にしながら、「ゴラァ」などと、クレームをつけた上、「後で水没するかもしれないから新機種に変える。料金を払え」と要求。店長とその親でオーナーの男性、さらに本部から来たと思われる人間がなぜか要求に屈し、「申し訳ございません」と土下座してしまう。
この様子に調子に乗った一味は「謝罪するのに手ぶらなのか」などと要求。オーナーは「タバコで堪忍してくれるんですか」と応じてしまった。この様子は全て動画に収められており、動画サイトにアップロード。また、Twitterでも土下座画像とともに「ヤッパリ店員(店長) オーナー頭おかしいわぁ! オーナーの息子らしい!」などとツイート。さらに、女が別の人間に事態をチクり、営業所長に「タバコと携帯代では話にならない」「誠意は金」と連絡を入れ、金を奪おうとした行為も後に発覚している。
本人たちは意味不明な征服感情を持っていたようだが、動画を見たネットユーザーの怒りが爆発。即特定作業が進められ、一日で全員の名前と住所がネットに流れる。後日ファミリーマート側が被害届を提出し、名前の特定された人物はすべて逮捕された。
その後の裁判では、この一味が過去にもコンビニエンスストアに押し掛け、因縁を付けるなどして金品を強奪していたことが発覚。さらに、反社会勢力との繋がりを示唆した当時46歳の男は、名の知れた不動産会社に務めていたが、解雇となり、会社が謝罪コメントを出す事態に発展。一部では、この行動が全てこの男と不動産会社が計画した「地上げ行為」だったのではという見方も出ているが、真相はわかっていない。
この犯罪は多くの人々の怒りを買い、犯行一味の名前と顔は現在もネット上に残されている。現在何をしているのかは不明だが、裁判で有罪判決を受けており、就職などは極めて難しい。その代償は極めて大きいが、事件を考えれば当然の報いとの声が大半だ。
一方、事件のあったコンビニエンスストアも、現在は閉業している。この件については、コンビニ側がなぜ犯行一味の言いなりになって土下座をしたのかが議論となっており、「コンビニ統括者から謝罪するよう強要されたのではないか」との声もある。店舗責任者ではなく警察に通報していれば、違う展開になったはず。
仮にそれが事実だとすれば、誰も守ってくれない中で謝罪せざるを得ない状況に追い込まれたということになる。辞めたくなるのは当然だ。救いは、コンビニ側にネットユーザーから同情と激励の声が寄せられたことだけだろう。
誰もが不幸になったと言わざるを得ない事件だが、この件をきっかけに、クレーマー対応について考えを新たにしたコンビニ経営者は多かったと聞く。その場にいた被害者の傷は現在も癒えることはないだろうが、苦しみに耐え謝り続けた行動は、店舗従事者に大きな学びを与えた。
文 櫻井哲夫