3戦あった日本戦の1試合の平均入場者数は、約4万4000人。2006年の第1回大会の約2万9000人とは雲泥の差だった。この2つの大会を写真取材した本誌カメラマンが言う。
「盛り上がり方が全然、違った。前回大会は記者もカメラマンもオープン戦が中心だったが、今回はこっちが最優先でしたから」
スポーツ紙記者の見方はこうだ。
「前回大会の目玉選手はイチローぐらいしかいなかったのが、今回は松坂、城島に岩村とメジャーで活躍している選手がそろって出場していた。観戦者はそれらの選手のプレーも見に来たんじゃないですか」
盛り上がる前兆はあった。宮崎合宿にファンが押しかけ、練習試合は入場無料とあって徹夜組も出現。試合当日は交通渋滞が起きたほどだった。
そして、本番。球場で応援できないファンはテレビの前に釘付けになった。
9日、日本がコールド勝ちした韓国戦初戦の視聴率は関東地区で平均33.6%(関西地区37.3%)。瞬間最高視聴率は47.2%。関西では50.8%にもなった。もちろん、今年最高。ここ数年、シーズン中の視聴率が10%に届かないことと比べれば、驚くべき数字だ。大手広告代理店関係者が言う。
「もはやプロ野球中継は、スポンサーには魅力に乏しいコンテンツ。WBCの数字で見直す可能性は低い。一過性のものと思われています」
だから、日本テレビは中継権を手放したのか。テレビ局関係者の見方はこうだ。
「日テレは今季の巨人戦中継を大幅に減らすのは決定済み。セ・リーグで2連覇した昨年も視聴率は回復しなかったからです。だから、WBCも見送った。今回の高視聴率は悔しいけど、シーズンに入ったら中継した局は泣きを見るぞ、といったところじゃないか」
原監督では人気回復はかなわないと踏んでいることになるが、テレビ朝日に続いてそろばんをはじいているのがTBS。アメリカでの試合は、平日の正午からの試合も実況放送枠を確保している。前出の広告代理店関係者が証言する。
「スポット広告が相当数、入るのは確実です。今はテレビ局も売り上げ減で大幅に経費を削減している。日本代表が決勝進出を果たせば、大入り袋が出るんじゃないか」
16日早朝に、侍ジャパンはキューバとの第2ラウンド初戦を迎える。ルールの読み違いから松坂がぶっつけ本番で先発登板する。もし快投を演じるようなら、日テレは“羮(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹く”をことになるのか。