オリックスの広報担当者は私にこんな話をしてくれた。春季キャンプも後半に突入した第4クール。選手の疲れもピークに差し掛かろうかという時期である。エース金子のサイン会には、関係者から「まるでディズニーランドのミッキーマウスみたいだな」という声があがるほど長蛇の列が作られていた。脇腹の違和感から大事を取って2軍で調整中の岡田は、連日2軍球場の前やバファローズタウンの入口などを利用して、即興のサイン会を行っている。私が取材していた間には、まだ体調が安定しない安達(了一)も、調子が良い日はサイン会を行っていた。
現在、オリックスが春季キャンプを行っている宮崎市では、ソフトバンクと巨人(1軍は途中から沖縄へ移動)がキャンプを行っており、3チームのキャンプ地を結ぶシャトルバスが運行されている。規模的にはソフトバンクや巨人にまだまだ及ばないが、こうした選手のファンサービスの良さがオリックスファンのみならず、地元の方々や、宮崎を訪れているプロ野球ファンに浸透し、第4クール最終日の18日には、宮古島から宮崎にキャンプ地を移転してから最多となる11,130人(過去最多は9,200人)動員という形で実を結んだ。
選手に話を聞くと、「もっとオリックスファンを増やしたい」という声が本当に多い。中には「時間はかかるかもしれないですけど、こうしたらファンが増えると思いませんか?」と逆に聞いてくる選手もいる。そんな意識ができる限りファンサービスを行うという気持ちにも繋がっているのだろう。
ベテランでは、中島宏之のファンサービスの素晴らしさがファンに好評で、中には感激のあまり泣いてしまうファンも。中島はシーズン中も「できる限りのリクエストには応えてあげたい」という思いから、ファンに気軽に話しかけながら、サインをする姿が良く見られる。3年前移籍してきた時に、そんな中島にファンサービスについて尋ねると「僕にとっては当たり前のこと。それでファンが喜んでくれれば」と話してくれたが、今は全選手が“できる限り”のファンサービスを行うようになった。
ファンとの距離が近すぎるという問題があるのも事実だが、そこはファンもモラルを守ることで、今後も12球団一のファンサービスをとことん突き進んでもらいたい。その上で、最大のファンサービスである優勝を達成して欲しい。
取材・文 / どら増田
カメラマン / 舩橋諄