search
とじる
トップ > その他 > 【不朽の名作】あの仲間由紀恵も声での出演をしていた「機動戦艦ナデシコ -The prince of darkness-」

【不朽の名作】あの仲間由紀恵も声での出演をしていた「機動戦艦ナデシコ -The prince of darkness-」

pic pic

パッケージ画像です。

 今回は1998年に公開されたアニメ映画『機動戦艦ナデシコ -The prince of darkness-』を紹介する。同作は、1996年10月から1997年3月までテレビ東京系で放送された『機動戦艦ナデシコ』の続編に当たる。「劇場版ナデシコ」という呼び方でも知られ、『新世紀エヴァンゲリオン』や『新機動戦記ガンダムW』などと共に、90年代後半に話題となった作品の一つだ。

 現在は作品の内容よりも、『ガメラ3 邪神覚醒』と並び、まだあまり有名ではなかった頃の女優の仲間由紀恵が出演していた作品としての方が知られているかもしれない。しかもガメラ3では、ただ怪獣の犠牲となる一カップルとしての出演だったが、同作ではセリフ数こそ少ないものの、劇場版の展開を説明する上で重要キャラの1人であるラピス・ラズリの声を当てている。

 テレビシリーズは『宇宙戦艦ヤマト』の「波動砲」のような必殺砲がある宇宙戦艦モノと『機動戦士ガンダム』に代表されるロボットアクション要素、さらに1970年代スーパーロボット要素も盛り込みつつ、そこにギャグやSF理論を混ぜ合わせたような作品となっている。シリアスな展開がありつつも、全体的にはおバカなノリが多かったが、劇場版では、かなりシリアスのほうに重きを置いている印象を受ける。話のノリ的にはおバカノリなところが多少あるのだが、全体的には重めな空気であり、テレビシリーズとかなり雰囲気が変わっているのが、この作品の大きな特徴だ。その影響か、シリーズとしての連続性はありつつも、別の作品として単体でもストーリーの流れはそれなりに理解出来るようになっている。おそらくテレビシリーズのノリを知っている状態で観るのとそうでないとでだいぶ印象の変わる作品だ。

 同作はテレビシリーズの3年後が舞台となっているが、テレビシリーズの主人公であるテンカワ・アキトはメインキャラにいるものの、主人公的なポジションは、テレビシリーズで機動戦艦ナデシコのオペレーターをしていたホシノ・ルリに譲っている。

 冒頭から、いきなり前作の主人公であるアキトと、ヒロインポジションのミスマル・ユリカが事故で死んだという前置きから始まる。後の展開でこの死は、とある陰謀のための隠蔽工作と判明し、その真相と2人の行方を追う展開が、ナデシコBの艦長となったルリの視点で描かれる。

 特にアキトは今回、重い使命を背負っているため、テレビシリーズと大きく性格の変わったキャラとなっている。この部分はテレビシリーズを観た人の方が違和感を感じるところだ。それまでの過程を飛ばしているので、キャラの成長を感じる機会が全くなく、いきなりダークヒーローになってしまっている。以前までのキャラの魅力の一つだったバカノリが全くない。この辺りでテレビシリーズが好きな人には賛否が分かれる部分と言える。加えて重々しい場面で突如に挟まれるギャグノリの設定などとの温度差がテレビシリーズ以上に激しく、下手をすると混乱するレベルになっている。所々明るい雰囲気で取り繕っても、正直どうにもならない。

 重い展開を重視した割に、結局最後は犠牲は最小限に、あっさりと終わってしまうのもこの作品の残念な点だ。それなら従来のバカ展開多めでも良かったのではと思うほど。しかも続編の含みをかなり残した中途半端ともいえる終わり方だ。まあ、ユリカが合流した時点でおそらく普段のバカノリに戻ってあっさり解決するだろうということは続編がなくてもなんとなく感じられはするが。

 結果的にこの作品で一番のみどころは、実質的な主人公であるルリになる。元々、エヴァの綾波レイと同じく口数が少ないヒロインとして当時は比較されることも多かったが、ルリの方が皮肉などを言うなど、テレビシリーズから感情の揺れ幅が綾波よりは大きい。容姿の他に、そこがこのキャラの大きな魅力の一つだった。そして、この作品では、元々属性に艦長としての責任感もありつつという、より意思の強い性格となっており、さらにルリと同じく遺伝子操作によって生まれた少年でナデシコBの副長補佐、マキビ・ハリの面倒を見るという姉属性も追加され、また違った魅力を見せる。これらの新規の設定に加え、従来通りの皮肉屋な所も残っており、振り切りすぎて、まるでルリを愛でることに特化した作品と感じてしまうほどだ。テレビシリーズからのファンが見たい部分をしっかりと押さえており、さらに劇場版からの鑑賞者にもキャラの魅力をわかりやすく伝えている。ルリの視点から話を展開するという方法は大成功だったと言えるだろう。キャラの存在感だけで作品を良い方向に引っ張っていけるという部分では。

 あと、戦闘シーンの動画はかなり力が入っている。当時のアニメ映画の盛り上がりを考慮してもこのレベルの描き込みなかなかだろう。この作品でアキトの乗機となっているブラックサレナが登場するシーンの演出は、どれも印象的だ。この戦闘作画だけでも観ていて楽しい作品かと。

(斎藤雅道=毎週土曜日に掲載)

関連記事


その他→

 

特集

関連ニュース

ピックアップ

新着ニュース→

もっと見る→

その他→

もっと見る→

注目タグ