巨人のライアン・クック(32)が先発起用されたのは、9月10日だった。4回途中で降板、「次も使う」なる首脳陣の言葉からして、合格点が付けられたようだが、米国の野球取材者は彼の先発転向にかなり驚いていた。
繰り返しになるが、クックはクローザーを予定して獲得した選手だ。しかし、故障と「牽制やクイックモーションを重要視する日本のスタイル」に馴染めず、二軍での調整が長く続いていた。
「クックは『第2のマイコラスになる』と、米国では位置づけられていました。クックは背中の広背筋の怪我、トミー・ジョン手術で右肘にメスを入れるなどし、2016年シーズンから18年途中まで、マイナーで調整程度の登板しかしていません。日本で復活し、レベルアップもして、いずれ、メジャーリーグに帰ってくると…」(米国人ライター)
マイコラスは15年から3季、巨人に在籍したピッチャーだ。昨季、メジャーリーグ・カージナルスに復活し、いきなり、最多勝のタイトルも獲得した。巨人移籍前はマイナーとメジャーを行き来する程度だったが、日本の水が合ったのか、「メジャーでも通用する先発投手」に成長した。
「クックは昨年、マリナーズで19試合に登板しましたが、ストレート、変化球ともに故障前とは程遠いものでした」(前出・同)
巨人と契約した18−19年オフ当時、クックのもとには複数のメジャー球団が条件提示をしてきたが、「マイナー契約で様子見」というものばかりだった。「主力投手として扱う」としたのは、巨人だけ。クックとその代理人は巨人を選択したのだが、その理由は、単にマイナー扱いの屈辱を避けたからではなかったという。
「ひと昔前、日本の球団と契約することは『都落ち』のイメージも確かにありました。でも、今は違います。日本はWBCでの優勝が2回、その日本の球団から誘われたのだから、若い選手はプラスに捉えています」(前出・同)
マイコラス以外にも、コルビー・ルイス(元広島)、ライアン・ボーグルソン(元阪神、オリックス)などが米球界帰還後に成功を収めている。
「クック自身、先発転向はチャンスだと思ったのでは? 日本でもクローザーとしてはイマイチ。メジャーに帰還できたとしても、30代なので高額年俸は望めず、セットアッパーが限界だったかもしれません。先発投手になれば、クローザーとは異なる好条件も見込めます。米球界では先発投手のほうが高額年俸を勝ち取りやすいので」(プロ野球解説者)
巨人の優勝に貢献したいとの思いもあったはずだ。また、日本の野球を学ぶことが自身のスキルアップにもつながると判断したのだろう。「日本球界が踏み台にされている」と捉える声もあるかもしれないが、日本のプロ野球チームからのオファーを歓迎する雰囲気が米球界に定着したのは喜ばしいことではないだろうか。故障で2年以上投げられなかったクックを蘇生させたことで、日本球界に好印象を抱くメジャーリーガーがもっと増えてくれたら、いいのだが。(スポーツライター・飯山満)