「昨年オフ、解雇された時点で『本人が現役を続ける意志があるんだから、何処かに決まるだろう』と見ていました。特定球団がキャンプ中の入団テストを行うなど、獲得に向けた具体的なアクションを起こす可能性は高いと思われます」(在京球団職員)
昨年オフ、前西武・工藤公康(47)、前楽天・中村紀洋(37)といったビッグネームが解雇された。現役最年投手の工藤は一軍での登板試合数は僅か「10」。戦力になりきれなかったとはいえ、「まだ続けられる」というのが大方の見方だった。本人はすでに次のステージに向けて頭を切り換え、トレーニングを開始していたが、キャンプインまで2週間を切った現時点で去就に関する情報は出ていない。中村ノリに関しても、同様である。
両ベテランに対し、悲観的な声も聞かれたが、「まだ希望はある」という。
「外国人選手がとくにそうなんですが、渉外担当者が推しても、日本球界に適応できるのかどうかは本当にやってみないと分かりません。だから、日本球界を経験した外国人選手が別球団とシーズン途中に契約するパターンが増えたんです。それと同じで、メジャーの開幕ロースター漏れの日本未経験の外国人を獲るより、彼らと契約した方が戦力としての計算も立ち易い」(前出・同)
一軍の試合に出場可能な支配下登録・選手数は「70人」。どの球団にも言えるのだが、緊急補強せざるを得なくなったときに対応できるよう、2、3人を故意に空けておくパターンが多い。つまり、緊急補強の対象となる「日本球界経験者の外国人選手枠」に、彼らが当てはめられる可能性は高いというわけだ。
「両ベテランとも、『年俸がいくら以上でなければならない』といった情報は一切ありません。出来高のオプションは付けなければなりませんが、さほど高くない年俸額でも話はまとまるでしょう」(同)
しかし、こんな指摘も聞かれた。
「09年オフにオリックスを退団したタフィ・ローズは復帰できませんでした。不景気だから、補強よりもトレード、もっと突っ込んだ言い方をすれば、若手に切り換えた方が安上がりです」(球界関係者)
また、キャンプ中に個別の入団テストを行うときもある。前年、前阪神・今岡誠内野手(36)は千葉ロッテのキャンプに同行し、テスト合格している。
当然、不合格に終わった選手もいないわけではない。
「昨春、元西武の三井浩二投手は合格できませんでした。楽天、ソフトバンクの両球団のテストを受けました。両球団とも三井投手に持った心象は『真っ直ぐが思ったよりも速くない』と…。ベテランは開幕に向けた調整方法が身体に染み付いているので、2、3月の時期にベストピッチングは出来ません」(前出・関係者)
打者の中村ノリも同様だろう。春先にベストコンディションに仕上げろと言われても、無理である。テストを受けさせる側はそういうベテランの体調まで考慮して、合否を判断しなければならない。こうしたベテランの調整方法について見方を変えれば、「キャンプ招聘=合格内定」。本当にまっさらの状態でキャンプ中の入団テストを受験するのは、ベテランになればなるほど難しいと解釈できる。
工藤は横浜を退団した09年オフのことだ。まだ西武が獲得に名乗りを上げる前、「海外挑戦」を口にしていた。「たとえマイナーでも」という言い方をしたときもあれば、「韓国でも台湾でも」と口にしていた。「現役が続けられるのなら、何処でもいい」というわけだ。
2月のキャンプ中、実績十分の工藤、中村ノリの名前がクローズアップされるのは必至だ。案外、2人ともキャンプ中の臨時・入団テストを見越して調整を続けているのかもしれない。