もともと、渡辺会長のワンマンぶりは有名で、それを告発した清武代表の勇気は買うが、野球界全体としては、大きな迷惑を被ることになってしまった。この日は12日開幕の日本シリーズ(中日対福岡ソフトバンク)の前日で、例年通り、中日・落合博満監督(57)とソフトバンク・秋山幸二監督(49)が出席して監督会議、会見が開かれたのだ。年間最大のビッグイベントが開幕する前日に、過激な会見をやった清武代表の行為は、日本シリーズに冷や水を浴びせるような形となった。
野球界では日本シリーズ開催中は、できるだけ静観して、話題がシリーズに集中するように配慮するのが慣例となっている。それもあって、FA有資格者からの行使申請受付も、シリーズ終了の翌日からと定められているのだ。本来なら、「さあ、明日から日本シリーズ」といった調子で、野球界全体が盛り上げなければいけない日に、前代未聞の会見を開いた清武代表の行為はいかがなものか。
清武代表にも言い分はあるだろう。ヘッドコーチ残留が内定していながら、渡辺会長から2軍降格を指示された岡崎郁コーチが、契約を交わす予定になっていたのが、この日だったからという事情は分からぬではない。「日本シリーズ開催中よりマシ」との判断だったのかもしれない。しかし、清武代表が会見を日本シリーズ前日にぶつけたことで、テレビの報道番組では、この話題で持ちきり。翌日の新聞でも、シリーズの話題は隅に追いやられてしまった。
この先、メディアは清武代表、渡辺会長を追いかけて、シリーズの報道に割かれる時間、スペースが減ってしまうのは明白。地味なカードの日本シリーズより、巨人の内紛を取り上げた方が話題性があるのだから、メディアとしては当然のことで、試合のテレビ視聴率にも響きかねないのだ。
日本シリーズを吹っ飛ばしてしまった清武代表。野球界にかかわる者として、TPOをわきまえなかった彼の責任は軽くはないのではなかろうか。
(落合一郎)