立ちトークほど、話す内容の起承転結がシビアに求められるものはない。完ぺきな到達点と爆発力が必要なため、発信する芸人としては、ゴールデンタイムの特番を仕切るに値する労力かもしれない。
そんな舞台に毎週立っているのは、さまぁ〜ず。2人きりによるトーク番組『さまぁ〜ず×さまぁ〜ず』(テレビ朝日系)は、ド深夜枠ながらも11年続いている。入れ替わりが激しいバラエティ業界において、打ち切りの憂き目を免れ続けているのは、ある種の奇跡だ。
30分番組で画面に映し出されているのは、大竹一樹と三村マサカズの2人だけ。トークはおおまかに3部構成だ。冒頭は、それぞれの身の回りで起こった近況や疑問、怒りなどを吐露する。中盤に差し掛かると、セットバックの大型ビジョンにトークテーマが映し出され、それに則って丁々発止。『目の前に現れたライオンにスモールライトをあてましたが、ネコくらいの大きさにしかできませんでした。どう戦いますか?』や、『知らないボタンと知らない扉が急に家にあったら、どっちから確認しますか?』など。いわゆる、ムダトークだ。ここは割愛されることが多いが、ラストは「お題」というミッション。即興芝居、ゲーム、なぞなぞ。イラストを描くこともある。2人の脳内を多角度から刻もうという構成だ。
随所に垣間見られるのは、2人の私生活だ。番組開始当初は子育てに追われていた三村はもう、子離れ完了。娘は成人した。オトナのオンナを匂わせる発言、視線を見せるようになったという。おむつを替えていた息子も立派な青年となり、そのころは結婚願望がゼロだった大竹が今では、おむつを替えるパパとなった。
番組観覧している女性の多くは、三村の長女と変わらない年齢層だ。20代の女性が、50代のオジサン2人がワチャワチャしている姿を、笑いながら温かく見守っている。これは、冒頭のダウンタウンにも同じことが言える。この見守られるゾーンに入った初老芸人は、強い。さまぁ〜ずはもう、半永久的に国民から愛されるパスポートを手に入れたのだ。
(伊藤雅奈子)