その黒木容疑者の余罪が次々に明るみになり、事態はとてつもない広がりを見せている。
黒木容疑者が非常勤医師に成りすましていた長野市風間のNPO法人「メディカルチェック」は27日、11〜12年度に、企業の健康診断で延べ4897人を診察していたと発表した。
同法人によると、黒木容疑者は長野市など北信地方を中心に、11年4〜12月に39社計2701人、12年3〜8月に35社計2196人に聴診や打診、問診をした。支払った報酬は計519万円に上る。
同法人は昨年3月、名古屋市の人材派遣会社を通じて求人情報を出し、黒木容疑者が直接、電話をかけてきた。面談の際、偽造した医師免許証のコピーとニセの履歴書を提示したが、運転免許証は「自宅に置いてきた」と提示しなかった。
また、神奈川県横浜市は27日、医師免許がないのに健康診断をしたなどとして、黒木雅容疑者が同市内の診療所で非常勤医師として約1年半勤務していたと発表した。首都圏の延べ1万1115人を健康診断で診察した。
同市医療安全課によると、黒木容疑者は11年3月26日〜12年9月7日の間、同市港南区日野中央の診療所「清水橋クリニック」に勤務。東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県の延べ279カ所の事業所などで巡回検診していた。勤務日数は計81日で、報酬は600万円弱だった。
同クリニックが医療専門の人材紹介会社に医師募集を依頼し、実在する医師の名前をかたった黒木容疑者から応募があった。同クリニック側は、履歴書や医師免許などの確認をせず、黒木容疑者とのメールのやりとりだけで採用を決めた。
高島平中央総合病院では2363人の健康診断をしており、これで、のべ1万8375人もの健康診断を担当していたことが明らかになった。
いずれも、人材紹介会社や病院側が医師免許の原本を確認しておらず、こういった事態に陥った原因はそこにある。黒木容疑者も悪いが、安易に雇用、紹介した側の責任も重い。
(蔵元英二)