08年、亀田3兄弟はかなり追い込まれていた。長男の興毅はメキシコで試合を行ったものの、日本では注目されずじまい。一昨年の世界戦で反則を繰り返した二男の大毅は1年間の謹慎処分を終え、12月に三男の和毅の日本デビュー戦とセットで復帰戦を行った。しかし、テレビ放映はなく、こちらも地味な扱いに終わった。
頼みの綱である興毅の世界挑戦は八方ふさがりとなっていた。WBC世界フライ級王者の内藤大助(宮田)との対戦は、ファンの期待も大きく、実現するかに思われながら、金銭面で折り合いがつかずにお流れ。WBA世界同級王者の坂田健史(協栄)と対戦する道は、古巣の協栄ジムと金銭トラブルを抱えているため、これまた実現不能の状態に陥っていた。
困った亀田家は、日本で認可されていないIBF、WBOといった団体のタイトルに挑む案も検討した。もし、本当に挑戦していたら、日本ボクシング界を追放されるのは必至。禁じ手を使おうと本気で考えるほど、亀田家は焦っていたというわけだ。
そんな閉塞した状況に風穴があいたのは、先の大みそかだった。坂田が指名挑戦者のデンカオセーン・シンワンチャー(タイ)に敗れて王座から陥落。これにより、興毅の世界挑戦の可能性が一気に広がったのである。
興毅は坂田の敗北直後、メディアに「満を持して登場ですわ」と上機嫌のコメントを発表。ようやくめぐってきそうなチャンスに小躍りした。
では今年、興毅の世界挑戦は本当に実現するのだろうか。あるボクシング関係者は次のように解説する。
「実現するでしょう。特に障壁はありませんから。亀田とやれるならデンカオセーンにとってもおいしい話。他の日本人とやるよりはファイトマネーがいいからね」
別のジム関係者は少し違う見方をした。
「タフな坂田を一発で倒したデンカオセーンは強い。あの慎重なオヤジさんなら、避ける可能性がある。この1年ほど調整試合しかしていない興毅にはきつい相手だからね。そうなると、内藤が負けるのを待つという選択肢もある。次の防衛戦は1位の指名挑戦者が相手だから、力の落ちている内藤が勝つのは難しい」
いずれにしても興毅にチャンスが回ってくるというのが、業界の見方だ。ただ、ボクシングは実力の世界。勝てばいいが、もし負ければ、亀田ブランドのさらなる下落は必至だ。
「WBAにしたって、WBCにしたって、外国人チャンピオンの方が、普通は強いんだから、挑戦したって厳しいよ。内藤や坂田がチャンピオンのうちにやっておいた方が良かったんだよ。興毅が最初にタイトルを取ったときみたいに、チャンピオンに挑戦しなくていい王座決定戦っていう荒業はもう使えないだろうしね」(前出ジム関係者)
勝てば復活、負ければ過去の人。亀田家にとって09年は、間違いなく勝負の1年になりそうだ。