勝率2割8分9厘、借金19のチームを引き継いだ小川淳司監督代行(53=当時)の成績は59勝36敗3分け。クライマックスシリーズ進出圏に浮上してきた快進撃はさすである。その勝因は『打線』ではないだろうか。データでは、小川監督代行が指揮を振るった98試合中42試合が『2ケタ安打』を記録している。8月に達成した『7試合連続2ケタ安打』は、球団新記録でもある。
序盤戦の不振は、「ここまで連鎖するか!?」と言いたくなるくらい、投打の中核選手が揃って不振に陥っていた。そういう“偶然”はもう起こらないだろう。東京ヤクルトの打線はデータが証明するように脅威である。優勝を狙うのなら、あとは、投手陣の再整備だけだ。
まず、「先発陣」だが、石川、館山、(佐藤)由規、村中といった名前はすぐに浮かんでくる。この4人で昨季、48勝を挙げている。クローザー・林昌勇も健在なので、試合終盤を最小得点差で逃げ切る態勢はできている。
しかし、先発ローテーションの5番手と6番手に不安が残る。チーム関係者によれば、昨季、57試合に登板した5年目の増渕、2年目の中澤を予定しているという。変化球の持ち球が豊富なドラフト2位・七条祐樹(26=伯和ビクトリーズ)も有力候補だそうだ。
ヤクルトは故障者の多いチームでもある。増渕、中澤、七条は全員、先発ローテーションに駆り出されることになるのではないだろうか。
そして、投手陣を預かる荒木大輔コーチが熱視線を送っていたのが、3年目の日高亮(20)だった。昨年の成績はファーム戦21試合に登板して、防御率7.36。一軍登板はない。だが、「おおっ!」と唸ってしまうくらい、投球フォームが綺麗で、ブルペンでは糸を引くようなストレートをテンポ良く投げ込んでいた。こんな凄い投手だったかな? それも、左のオーバーハンド…。一般論として、シーズン中の球速は「キャンプ中の球速プラス5〜10キロ」とされている。その通りになれば、日高は140キロ半ばをコンスタントに出せるだろう。「将来のエース候補」とは聞いていたが、同じ左腕投手の村中、中沢と並んでも見劣りはしない。今シーズン中、それもかなり早い時期に一軍デビューしてくれそうだ。
確実に先発枠に入ってくる前述の4投手のうち、2人が左投手である。ここに日高の成長を加えれば、ヤクルトの先発ローテーションは“左投手王国”に飛躍する。
由規はさらに逞しくなった。胸板も厚くなり、身体も一回り大きくなったように見えた。今季は最多勝争いにも加わってくるだろう。日本ハムの斎藤ほど注目度は高くないが、同じ「ユウキ」の七条も即戦力と見て、まず間違いなさそうだ。
注目は、3年目の左腕・日高。一場靖弘(移籍3年目)がちゃんとやってくれれば、投手陣の不安は最初からゼロなのだが…。(スポーツライター・飯山満)