ヤクルト・小川淳司監督代行が「そんなに出ていたの?」と首をかしげれば、荒木大輔投手コーチも「テレビでは152キロ? そんなもんじゃないの?」と発言。身内からも日本人投手最速日本新記録に疑問の声があがっている。
ネット裏2カ所にスピードガンを設置している神宮球場側は「161キロが出たことは間違いありません」と、新記録達成を強調するが、こう反論する球界関係者、OBは多い。「神宮のスピードガン表示はあてにならない。他の球場に比べて、数字が出過ぎるからね。東海大・菅野、中大・沢村も大学球界最速の157キロを出している。数字の出にくい福岡ヤフードームと比べると、軽く5キロ以上は速く計測されている」と。
確かに、球場によって、「速く計測される」「スピード表示の数字が出にくい」という、バラツキがあるのは事実だ。「初速を表示すると球場と、終速を出す球場の違いがあるから、数字が変わってくるのではないか。終速より初速の方がスピード表示の数字が高くなるのは当然だろう」。
こう解説する球界関係者もいるが、それだけではないだろう。スピードガンを設置する場所によっても変わってくるだろうし、ファンを喜ばせるために、水増し計測しているのではと思われる節もある。
「コミッショナーは国際試合に戸惑わないために、来季からミズノ1社による飛ばない統一ボールを導入するのだから、スピードガンも統一すればいい。そうすればすっきりするだろう」と、スピードガンの統一を求める声もある。
スピードガン表示の日本記録が、コミッショナー表彰されるのならば、確かにスピードガンの機種、設置場所など統一する必要があるだろう。が、しょせんスピードガン表示は、ファンサービスの一環だし、いくらスピード記録が出ても投手は勝たなければなんの意味もないし、価値はない。
ただし、野放しにして、各球場でスピードガン表示をアップする競争が始まったりすると、百害あって一利なしだ。スピード競争に目の色を変えて、負けても自己満足するような投手が出てこないとも限らない。
マスコミ報道も自戒しないといけないだろう。甲子園で「松坂超えの最速投手、新怪物・寺原」とマスコミが大騒ぎした日南学園・寺原隼人は、ダイエー・ソフトバンクから横浜に移籍、プロ入り9年目だが、芽が出ていない。日本球界のエースになり、メジャーに移籍した松坂大輔(レッドソックス)と比べること自体が間違っていたのだ。
が、あれだけ騒がれれば、本人や周囲も勘違いしてしまうだろう。スピードガンの弊害以外の何物でもない。見た目の速さではなく、打者が感じるスピード感が大事なのだ。ロッテの渡辺俊介のように130キロ台のストレートでも勝てる。変化球とのスピード差が、打者を幻惑する。プロ3年目でようやく開花しかかった由規が、日本人最速記録にとらわれると、元の木阿弥になってしまう。