照ノ富士は「1勝1敗」で迎えた3日目・11日の平幕・翔猿戦に寄り切りで敗れたが、取組終了後に腰を少しそらし、足元をふらつかせながら東の徳俵前に戻るなど下半身を痛めたようなそぶりを見せる。すると、翌4日目・12日に「腰椎椎間板ヘルニア、腰椎椎体終板障害で1カ月間の安静加療を要す」との診断書を相撲協会に提出し途中休場した。
12日の報道では、師匠・伊勢ケ浜親方が「腰が痛いのを我慢していた。昨日(3日目)の取組でヘルニアになった。再出場は厳しいんじゃないか」と厳しい見方を示したことも伝えられている照ノ富士の休場。ファンの間にも落胆が広がる中、一部は翔猿戦を裁いた行司・式守伊之助にも責任があるとみているようだ。
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「翔猿戦の照ノ富士は右を差しながら前に出た後、こらえる翔猿の隙をついて左上手で一枚まわしをつかむなど有利な体勢に持ち込もうとしました。ただ、締め込みが甘かったのかまわしが翔猿の胸元まで伸びたことで攻めきれず、最終的に翔猿に反撃され敗れています。この相撲について一部ファンは伊之助が勝負を中断して翔猿のまわしを結び直す、いわゆる『まわし待った』をかけていれば、照ノ富士が敗戦・故障休場することもなかったのではと不満を抱いているようです」(相撲ライター)
伊之助の判断はファンのみならず、尾車親方(元大関・琴風)も問題視している。同親方は『スポーツ報知』(報知新聞社/電子版/7月12日付)の記事内で「立行司の式守伊之助に問いたい。照ノ富士の左の一枚まわしが完全に伸びきったとき“まわし待った”をかけるべきではなかったか。立ち合いから一枚まわしではあったが、翔猿の顔の下までまわしが伸びてしまったら、さらに力は出せない」と、照ノ富士が不利をこうむる判断ミスだったのではと指摘している。
伊之助がまわし待ったをかけなかった理由だが、まわしが伸びた後も両力士が動き回りながら攻防を繰り広げていたため、待ったをかけるタイミングの見極めが難しかったことが考えられる。
また、昨年の7月場所で起こった騒動が伊之助の心理面に影響した可能性もある。伊之助は同場所8日目の照ノ富士対平幕・若元春戦で、若元春が右上手、左下手をつかみ一気に前に出ようとした瞬間、若元春のまわしが緩んでいるとして待ったを指示。しかし、若元春はこれに気付かず照ノ富士を寄り切った。
勝負審判がすぐに物言いをつけ協議した結果、取組は待ったがかかる直前の体勢を作り直させた上で取り直しという異例の事態に。伊之助は待ったをかけるタイミングが遅いなどとファンから批判を受けたが、1年前の判断ミスが頭をよぎり、今回は待ったをかけることをちゅうちょしてしまったという可能性もゼロではなさそうだ。
行司が批判される事態にもなった照ノ富士の故障休場。伊勢ケ浜親方は今後の方針について「巡業とかもあるし、とりあえず痛みをまず取る治療をして先のことを考える」と語ったというが、回復がうまく進むことを願うばかりだ。
文 / 柴田雅人