「職場に、安井君(仮名)という部下がいました。ヒョロッとして頼りなく、いつも元気がないので、ある時“一緒にスポーツジムに行って体を動かそう”と誘ってみたんです。私は筋トレが趣味で、会社近くのジムに週3くらいで通っていました。
彼も最初は乗り気ではなかったようですが、体験してみて楽しかったのか、入会を決めたんですね。それからジムに通い始めると、彼の体がみるみる大きくなり、活力に溢れ始めました」
部下が職場でも元気に明るく働く姿を見せるようになり、上司として嬉しかったそうだ。しかし、事態は思いがけない方向に進んでいく…。
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「ある時、安井君に“プロテインは何を飲んでるんですか?”と聞かれました。正直なところ全く詳しくなかったので、一生懸命ネットで調べてアドバイスをしました。
また、社食で昼食を取っていた時です。私は大好きなささみカツ定食を食べていたんですが、それを見た安井君が、“衣ははがした方がいいですよ”と言ってきました。拒むわけにもいかず、以来、衣をはがして食べるようになりました。
さらに彼から、“家での食事もLINEで送り合いましょう”と誘われ、仕方なく毎日食事を写真で撮り、送信し合うように。私は、運動をしたら食べたいものを食べる派だったんですが、全く好きなものが食べられなくなりました。
どうしても食べたくなった時は、後ろめたい思いをしながら隠れて食べました。そんな彼が転職をするという話を聞いた時、ようやく食事制限から解放されると、喜びが湧きました」
上司としても、自分から勧めたものだけに、止めるわけには行かなかったのだろう。部下に行動で示そうとしたところ、自分の首を絞めることになってしまったわけだ。信頼関係を築くことの難しさを痛感させられる。
写真・Usodesita