そこで白羽の矢が立ったのが、4年目の外野手・蝦名達夫だった。いきなり2番センターでスタメン起用されると、2回には右中間に上がった鋭い打球に対し、フェンスに直撃しながらもキャッチ。まだエンジンのかかっていなかった先発のトレバー・バウアーから「あの右中間の打球、あれが抜けていたら得点になっていたと思いますし、本当に試合のターニングポイントになったプレーだったと思います。ほんとに素晴らしかったです」と最敬礼されるビッグプレーを披露し、その後の完投勝利に大きく貢献した。
蝦名はファームでイーグルスとの戦いの真っ最中だったが「急きょけさ仙台から戻ってきてくれた」と指揮官は裏事情を説明。「今季初出場でしっかりとやってくれました。守備で大きなプレーもありましたし、得点にはつながらなかったですけれども、送りバントも決めた。いい働きをしてくれました」と期待に応えたプレーの数々に目を細めた。
昨年は5月6日に佐野のけがにより一軍に呼ばれると、5月は打率.308と好成績を残すことに成功。交流戦に入った5月31日に代打でヒットと盗塁でアピールすると、2日からの4試合はスタメンに抜擢。6月はホームラン1本を含む打率5割ジャストと好調をキープし、通算でも打率.364と急上昇。結果的には61試合出場で打率.247、ホームラン3本とキャリアハイの成績を残したが、今シーズンは相次ぐけがもありやっと一軍から声がかかった。
チームにとって日本人の同型の大田泰示は、現在打率.136とバットは湿った状況が続き、リーグ戦ではDHも使えないため、ネフタリ・ソトとタイラー・オースティンの右の大砲コンビをともに起用することは難しい。そこに加えレギュラーの桑原の離脱は大きな痛手だが、蝦名にとってはチャンスが到来した形となった。身体能力の高さはチームでもトップクラスのロマン砲。まずは一軍定着で、首脳陣の信頼を積み重ねていきたいところだ。
写真・取材・文 / 萩原孝弘