一家心中だとして、無理心中であったのか、合意の元での一家自殺であったのか?
猿之助さんは警察の取り調べに対して「死んで生まれ変わろうと家族で話し、両親が睡眠薬を飲んだ」と語ったというが、現在の睡眠薬は100錠飲んでも死なないほど安全性が高い。もちろん高齢のご両親なら死ぬ可能性は大きくなるが、3人はそのことを知っていたのか?
警察の発表では「向精神薬を服用」とあり、睡眠薬とは限っていない。向精神薬の中には、用法容量を守らないと危険なものもある。どうやって親子はその知識と薬を手に入れたのか?
薬の包装シートや瓶、飲み残しの薬などが見つかっていないのはなぜか? 猿之助さん自身が始末をしたのか、したとしたらどこにどうやって? そしてこれから死にゆくのになぜ? 包装シートなどは第三者が持ち去った可能性もある。
猿之助さんの口述によると、眠りについた両親の顔にビニール袋をかぶせている。これはより確実に両親を死に至らしめるためであろう。
猿之助さんが救急搬送され2日後に「退院」と報道され、一部に自宅には戻ったというものもあった。この報道にはさすがに「?」であった。自宅もまだ捜査中かも知れないし、猿之助さんが再び自殺をこころみるおそれもある。捜査結果によっては逮捕・起訴の可能性もある。
猿之助さんはいまも【殺人】【同意殺人】【自殺ほう助】【自殺教唆】の嫌疑がかけられていて、捜査一課が動いているという。捜査一課とは殺人、放火、強盗、強制わいせつ、誘拐、立てこもりなど、凶悪犯罪の捜査を担当するところで、そうやすやすと帰すとは思えない。
どうやら「自宅に戻った」というのは報道の勇み足で、退院というより警察病院への転院であったようだ。
警察病院なら、一般入院者ではないので、弁護士以外のお見舞い客など第三者と面会するのは難しい。実質拘留中ということであろう。
猿之助さんは遺書らしきものを残しているが、両親は残していない。薬を無理やり飲ませたという痕跡はないようだが、父親の市川段四郎さんは認知症をわずらっており、ほぼ寝たきり状態で、母親が介護をしていた。父親の段四郎さんは、本当に自殺の意思はあったのだろうか?
遺書らしきものには「遺産はMに相続させてほしい」とも書かれていた。Mさんは猿之助さんのマネージャーで、3人の第一発見者。猿之助さんとMさんは恋人同士であるという。そのMさんはいまのところ行方がわからない。
おそらく警察はそうとうなところまで調べているのだろうが、この事件はいまだに謎が多すぎる。
プロフィール
巨椋修(おぐらおさむ)
作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、42歳で映画監督。社会問題、歴史、宗教、政治、経済についての執筆が多い。
2004年、富山大学講師。 2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。陽明門護身拳法5段。