16日の横須賀スタジアムでお披露目した際もそうだったが、ファンの視線が真っ先に行くポイントは、バウアーがマウンドに向かった際に行う独特の仕草だろう。
まず小走りでマウンドへ向かうとホームに背を向け、ボールを握った右腕をバックスクリーン方向に力強く振る仕草を3回行い、その後助走をつけて立っているキャッチャーに向かって剛速球を思い切りよく1球投げ込む。
シャドーのような仕草は、日本で投球練習の回数がルールブック上、メジャーよりも少ない7球までと定められているためそれを補う意味での準備。助走からのピッチングは「15歳の時からずっと続けているルーティンで、もう人生の半分以上やっています」と少年時代から続けていることを明かした。
「その時考えていたことはとにかく速いボール、強いボールを投げようと思ってやっていました。それをやることによってそれを思い出し、ここで速くて強いボールを投げるんだと思い出すために今はなっている」と説明。その後はマウンドの後ろで目をつぶり瞑想することには「好きな曲を口ずさみながら、今この瞬間にやらなければいけないことを考えながら集中すること」に重点を置いていると説いた。ちなみにこの日の曲は「忘れてしまった」と笑いながらコメントしたことからも、その時の集中力のすごさを物語っているのではないかと推測できる。
メジャーでも最上級にランクされるが「野球は野球。高校でもメジャーでもメキシコでも、大きな障がいはない」と時や環境に左右されるものではないと言い切るバウアー。いつ何時でも変わらぬルーティンワークが、そのマインドとパフォーマンスをキープするための一つのキーにもなっているようだ。
取材・文・写真/ 萩原孝弘