まるで映画『マトリックス』のような話だが、世界トップクラスの研究者たちによれば「我々が高度なコンピューターシミュレーションの中で生きている」という仮説は可能であるだけではない。現実の世界で生きているという考えと比べても、可能性が高いと考えられるという。
もし我々の「現実」が単なるシミュレーションの世界であったとした場合、その世界から抜け出すには映画のように単に「赤い錠剤」を飲むだけでは済まない、難しい関門が立ちはだかっている。
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ルイビル大学のコンピューター科学者であるロマン・ヤンポルスキー氏は、最近の論文で「シミュレートされた現実」というアイデアを探求。より具体的には、人がシミュレーションの世界から脱出するための方法について述べている。
もし我々の認識している世界がコンピューターによるシミュレーションだったとすると、他のコンピュータープログラムと同様に世界にもバグが存在する。ハッキングやエクスプロイトによってシミュレーションの世界を突破し、その先にある本来の世界を垣間見ることができる可能性も出てくるそうだ。
このバグは自然発生するものもある。一方で、例えばある種の解法がない数式を無理に解こうとしたり、何百万人もの人々に瞑想させるなど、我々の知るコンピューター同様、一斉に多くの演算をさせ、大量のコマンドを実行させると生じるかもしれないという。
例えば突然シミュレーションの世界を構築したシステムをオーバーロードさせたり、グリッチノイズを空間に生じさせることも可能かもしれないそうだ。
我々の世界に、PCの画面で見るようなブロックノイズなどが出現する光景は、見たいような、見たくないような気分になる。
また、大型ハドロン衝突型加速器のような極めて複雑な技術の存在も、コンピューターシミュレーションという概念を意識しても何の影響もないと、ヤンポルスキー氏は論文の中で指摘している。
もし我々がシミュレーションの世界の中に生きているとすれば、世界を構築しているコンピューターは非常に高度なものであると考えられる。
現実に、そのようなコンピューターやシステムを構築できるものは存在するのだろうか。
さすがにヤンポルスキー氏の論文は仮説にすぎない。だがもし今後、仮想現実の技術が発達し、ネット上でもほぼ現実と変わらない世界を“体験”できるようになると、本当に仮想現実の世界から離れたがらない、文字通り「現実から逃避する」人も出てくるかもしれない。
そう遠くない未来、シミュレーション世界の仮説を検討する必要が出てくるのだろうか。
山口敏太郎
作家、ライター。著書に「日本怪忌行」「モンスター・幻獣大百科」、テレビ出演「怪談グランプリ」「ビートたけしの超常現象Xファイル」「緊急検証シリーズ」など。
YouTubeにてオカルト番組「アトラスラジオ」放送中
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