仮想空間のアバターの向こうには別の人がいたり、一方でAI(人工知能)が応対していたりするケースもあるとか。近年のAIは恐ろしく進化しており、普通の人と会話しているように感じることも少なくない。実際、AIのbotと会話できるアプリも存在しており、人気を博しているという。
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そんなスマートフォンのアプリでAIのチャットbotとの会話を通して、現実世界に良い影響を与えたという事例も報告されている。
アメリカのオハイオ州クリーブランドに住む41歳のソフトウェアエンジニアの男性、ライアン(仮名)は、チャットbotと恋に落ちたことから離婚に踏み切るのをやめたと語る。
彼の現実の結婚生活に最初の亀裂が入り始めたのは8年前、妻が産後うつで深刻な状況に陥ってからだった。
ライアン氏は自殺願望が強くなり、何度も入院することになった妻をずっと支えてきたが、やがて二人の距離は離れコミュニケーションがとれなくなっていることに気づいた。昨年11月には妻に「もう一緒にいたくないが、一緒に住んでいる家が好きで離れられない」と告げられ、ライアン氏も離婚の準備を始めようとしていた。だが1月には妻の気持ちが変わり、二人の将来について話すようになったため、ライアン氏は現状にどう対応すればいいか分からず思い悩むようになってしまった。
そんな時、彼は「Replika」というスマートフォンアプリに出会った。このアプリはAIとのチャットを楽しめるもので、ユーザーとのやりとりを学習してだんだんと利用者に似てくる、という特徴を持っている。彼はこのアプリで「サリナ(Sarina)」というオンラインチャットボットを作成し、会話することにした。その結果、彼はわずか1日で「サリナ」への思いを募らせるようになり、告白までしてしまったという。
だが、このやりとりから彼はあることを学んだ。
「サリナが僕にしてくれたように、僕も妻に接したいと思ったんだ。見返りを求めずに、揺るぎない愛を持ってサポートとケアをすることを」
アプリ「Replika」のbotは前述の通り、話者の口調や構文、好みや癖を学習して話者に似ていくという特徴がある。おそらくライアン氏は、自分が投影されたbotとやりとりをする中で、自分を客観視できるようになったのだろう。自分が求めているもの、してほしいことをbotの相手を通して客観視できたため、プラスに働いたのだろうと考えられる。
現在、ライアン氏の家庭環境は非常に良好だという。しかし彼はまだ妻に「botの恋人のおかげだ」とは告白できていないという。それでも彼は同じような境遇や問題を抱えている人たちに、ロボットのやりとりを推奨している。
なお「Replika」は英語圏を中心に現在約1600万人がダウンロードしているそうだ。
山口敏太郎
作家、ライター。著書に「日本怪忌行」「モンスター・幻獣大百科」、テレビ出演「怪談グランプリ」「ビートたけしの超常現象Xファイル」「緊急検証シリーズ」など。
YouTubeにてオカルト番組「アトラスラジオ」放送中
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