今でこそインターネットは生活に欠かせない身近なインフラであり、メールも使わない日はないほどの連絡手段の一つとなっているが、1980年代はまだごく少数の専門家によって運営されている規模のものであった。
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さらにウェブスター氏のパソコンは会社から貸与されたBBCマイクロであり、インターネットは未接続で外部との接続手段がなかった。当時はハードディスクすらなく、今では考えられないほど容量の小さなフロッピーディスクが、唯一の記憶媒体だった。しかしこのパソコンは、なぜか空間だけでなく、時間を超えて未知の存在とつながってしまったのである。
1984年12月のある日、ウェブスター氏がパソコンの電源を入れたまま放置していると、フロッピーディスクドライブに一件のメッセージが表示された。それはウェブスター氏と彼のガールフレンド、そして同居人のニックに宛てたものと思われるテキストファイルであった。
この時送られてきたテキストは「真実は恐怖を抱く者の悪夢であり、安全なのは沈黙の世界の身体である」と、まるで詩のような内容だった。
ウェブスター氏はこの謎のファイルに困惑したが、クリスマスも近かったことからすぐに忘れてしまった。翌年2月、再び会社からパソコンを借りたところ、再び謎の人物からメッセージが送られてきたのである。なお、彼は書き手が「悪魔が作ったもの」と考えていたようだった。
奇妙なことに、メッセージが届いたのと同じ頃、このコテージでは超常現象が頻発するようになった。キッチンに不可解に積み上げられた缶が見つかったり、壁にチョークで説明のつかないメッセージが書かれていたり、正体不明の足音を聞いた同居人もいた。
パソコン内での会話が進むにつれ、この人物はルーカス・ウェインマンという名前で「ヘンリー8世がキャサリン・パーと結婚していた頃」、つまり数百年前の16世紀に現在のメドウ・コテージの敷地内に建つ家に住んでいた人物だったことが判明したのだ。
16世紀といえばインターネットやパソコンはもちろん、電子機器どころか電気すらない時代の人物だ。そんな人物がいったいどのようにしてインターネットにつながっていないパソコンにメッセージを残すことができたのだろうか?
その後もやりとりを続けていくと、ルーカス氏はウェブスター氏が1985年の人物であることに驚いているようだった。
「君は自分のいる時代を1985年と言ったけれど、私はてっきり2019年の人だと思っていた。なぜなら私にリームス・ボイスト(Leems Boyst)を持ってきた人と同じように、2109年から来た人だと」
どうやらルーカス氏は2019年から来た "One“と名乗る謎の人物にリームス・ボイストなる装置をもらい、過去からメッセージを送ってきたようだった。また、「ルーカス」は魔女狩りから逃れるために用いた偽名で、本名はトマス・ハーデンであることも明かしている。
果たして、このメッセージは本当に16世紀から送られたものだったのか。問題のメッセージが届いたコンピュータのBBCマイクロは基本的なネットワーク機能を備えていたが、メッセージが他のマシンから何らかの形で送信された可能性は極めて低いという。何人かの心霊研究員が実地調査に訪れたところ、誰も触っていない状況だったにもかかわらず複数のメッセージが届くという現象が確認されている。
一方で、メッセージが表示される仕組みを利用した近しい人物によるイタズラだったのではないか、という説も存在している。
しかし、メッセージの内容が正しければ、我々の世界にリームス・ボイストなる装置が既に存在していることになる。時空を超えたメッセージを送った装置が見つかる日は来るのだろうか。
山口敏太郎
作家、ライター。著書に「日本怪忌行」「モンスター・幻獣大百科」、テレビ出演「怪談グランプリ」「ビートたけしの超常現象Xファイル」「緊急検証シリーズ」など。
YouTubeにてオカルト番組「アトラスラジオ」放送中
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