問題となっているのは、両チーム無得点で迎えた4回表での近本の走塁。この回阪神は近本の右安、大山悠輔の四球で2死一、二塁のチャンスを作ると、ここで打席の糸原健斗が右翼前に落ちる安打を放つ。これを見た二走・近本は三塁を蹴り本塁に走ったが、ダートサークル(本塁周辺の土の部分)に差し掛かったところで、ソフトバンク右翼手・中村晃からの本塁返球が目の前を横切ってきた。
すると、近本は両手を上げながらわずかに減速し送球を避けた後、そのまま本塁にスライディングで突入。ただ、この減速が響いたのか、本塁返球を捕球した捕手・甲斐拓也にタッチされ間一髪アウトとされてしまった。
この近本の走塁にネット上では「走塁もったいなさすぎる、もっと本気で走れよ!」、「当たってもインプレイだから避ける必要なかっただろ」、「変に減速せずにそのまま突っ込んでたら確実に1点入ってただろうに」と不満の声が寄せられた。
野球規則では「走者が打球を処理しようとしている野手を避けなかったか、あるいは送球を故意に妨げた場合」は守備妨害に当たると定められているが、故意ではない場合は妨害にはあたらず、ボールインプレイ(試合が続いている状態)としてそのままプレーが続行される。そのため、近本は送球との衝突を恐れずに走っていれば、衝突の有無にかかわらず本塁生還できていた、とみたファンは少なからずいたようだ。
ただ、ファンの中には「大怪我のリスクを考えたら避けたのは正解のプレーだった」、「あの送球を避けるなっていうのは酷すぎる、顔の目の前に跳ねてきてたんだぞ?」、「目先の1点よりも近本の今後の方がどう考えても大事だろ」と、近本を擁護するコメントも散見された。
「今回の場面では糸原の打球を前に突っ込みながら捕球した中村がそのままの勢いで本塁に返球しましたが、この送球がマウンド前方でバウンドし、近本の前を横切る際は顔付近の高さまで跳ねていました。そのため、仮にそのまま突っ込んでいれば顔面に送球が直撃し、鼻骨骨折などの大けがにつながっていた可能性もゼロではなかったでしょう。このことを踏まえると、近本の減速は予期せぬ故障を回避したファインプレーと捉えることも可能といえます」(野球ライター)
4回表の先制機を逃し、その後1点も奪えないまま完封負けを喫した阪神。拮抗した試合展開だったことも近本の走塁が問題視された一因と思われるが、けがで長期離脱されるよりはマシと別の見方をしているファンも一部いるようだ。
文 / 柴田雅人