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2003年にKAZMA※(本名・池田一真)とお笑いコンビ・しずるを結成した村上。『キングオブコント』(TBS系)で4度のファイナリスト、『爆笑レッドシアター』(フジテレビ系)のレギュラー出演のほか、個人として4冊の書籍出版や、近年ではドラマの脚本を担当するなど、書き手としても注目を浴びている。
そんな彼が今回挑戦したのが自伝的エッセイ。お笑いを志した学生時代、NSC(吉本興業の養成所)でのKAZMAとの出会い、賞レースや舞台、テレビなど、コンビとしての栄光と挫折……。まさに“赤裸々”に自分の芸人人生を描いている。
今回、書籍発売を前に村上にインタビューを実施。書籍のことはもちろん、彼が師と仰ぐピース・又吉直樹とのエピソードも語ってもらった。
ーー発売おめでとうございます。メディアプラットフォーム『note』で書いていたものが、書籍となりました。本にするうえで加筆修正も行ったそうですが、特に意識したことを教えてください。
フィクションではないですが、本当のことを“本当のまま”書いても、つまらなくなってしまうなと思っていて。読んでいてリアリティがありながらも、変わった雰囲気を出したいと思っていました。コントを書くとき、“ウソの話だけどリアリティがある”というのを心がけるんですけど、それに通ずるものがあったのかもしれません。
ーーコントは創作ですが、本作は自分の話です。また違った難しさがありそうですね。
そうですね。(担当者と)打ち合わせを重ねる上で、自分に酔ったような文章になると、読者の方が離れてしまうと聞いたんですけど、自分が自己陶酔するタイプだから、それを脱ぎ捨てるのが一番難儀だったかもしれないです(笑)。
ーー(笑)。『裸々(らら)』では、コンビとしての活動や、KAZMAさんとのやりとりなどが丁寧に書かれています。改めてKAZMAさんの魅力はどんなところにあると思いますか?
『アメトーーク!』(テレビ朝日系)で放送された『しずる池田大好き芸人』に集約されていると思うんですけど、ほかの人がやらない無茶な方向に信じて球を投げ続けてきた結果、大暴投と言われる球が、とうとう日の目を見たなって思います。ただこれを池田が聞いたら「何が大暴投だテメェ」って言ってくる可能性はありますけど(笑)。
いま、あいつなりのストライクゾーンが、世間の人たちにハマるチャンスが訪れているじゃないですか。それは僕にはできないことなので、そういう意味ではコンビを組んでいてありがたい存在ですね。
ーーKAZMAさんのことのほかにも、又吉さんとの出会いやエピソードも多く書かれていますが、村上さんにとって又吉さんはどんな存在ですか?
まずは先輩であり、師匠であり、同い年なので、いい友達でもある感じです。又吉さんの懐が深いので、こちらがそう思いやすいように接してくださるのが本当にありがたいです。
あと、“自分に自信を持っていいんだ”とか、“僕が面白いと思っていることに、ちゃんと面白いって言ってくださるんだ”とか、等身大よりちょっと大きく映してくれる鏡みたいになってくださる方なんですよ。いろんな人を紹介してくださったり、いろんな機会をくださったり、又吉さんがいなかったら、今の僕はいない。かけがえのない存在です。
ーー又吉さんに言われて印象に残っていることは?
お客さんの前で「しずるは一生懸命かめはめ波を出そうとしている」って言ってくださったことがありました。又吉さんは、不可能なことを1%でも信じて、がむしゃらにやっている僕らを見てそう言ってくれたと思うんですけど、当時の僕は「いや、思ってないですよ。何言ってんすか」ってスカしちゃって……。これは、お笑いをやっている中で後悔しているやりとりのひとつですね。又吉さんの言語能力の高さに対し、僕の読解力のなさがこうした事態を生み出したんですけど、でも、それはしずるや僕の強みなんだなって思いました。
新人の頃、あるライブで、舞台袖にいた(元カリカ、現在はニューカリカとして不定期に活動中の)林(克治)さんが、僕らのネタを見たとき、相方の(マンボウ)やしろさんに「舞台上に昔の俺たちがいる。ウケないことを全力で信じてやっている」って言ってくれたそうで……。やしろさんも袖まで見に来て「本当だ」っておっしゃってくれたらしいんですよ。そうやって、“ウケないことを全力で信じてやる”っていうのは、又吉さんの言う「かめはめ波を出そうとしている」という言葉に通じるのかなって思います。
ーー最近、ひょんなことからとんねるず・木梨憲武さんのラジオ『土曜朝6時 木梨の会。』(TBSラジオ)にご出演されました。本書でもとんねるずさんのことに触れられていますよね。
僕のお笑いに関していうと、“とんねるず生まれダウンタウン育ち”っていう意識があって、勝手にどちらも大事なお笑いの親だと思っているんですよ。ダウンタウンさん、カリカさんに憧れて吉本に入って、お二組はもちろん、ピースさんと出会って背中を追いかけて……。自分にとって大切な人はみなさん吉本なんですけど、あるとき、最初に好きになったのは、ノリさんのコントキャラだなって思い出しました。
僕、吉本には入ったんですけど、オチのある話、漫才、新喜劇、みたいなことをまったくやっていないんですよ。とんねるずさんって、おそらく「フリとボケがあって……」みたいな感覚でコントを作っていらっしゃらない。それを(その共通点を)ノリさんと話して、一緒にロケをさせてもらったときに、“この人のやることが(自分にとって)面白いと思う核だったんだ”って感じられて、すごくうれしかったですね。お会いできてよかったです。
ーー本書内にて「しずる」というコンビが、今すごく“イイ状態”だと記されています。違う方向を向いていたはずのKAZMAさんと自粛期間後にやりとりした会話シーンは胸が熱くなりました。
これをたとえば7、8年前に書いていたらクソみたいな本になっていただろうし、後半ムカつく仕上がりになっていたかもしれないです。40歳という節目に書けたこと、今のタイミングで書けたことは、自分の年表においてもよかったことだなって思います。
ーー今後、そんなイイ状態のしずるとしてやってみたい仕事は?
毎年、しずるの単独ライブを年に2回やっているほか、しずる、ライス、サルゴリラ、作家の中村元樹の7人でやっているユニット『メトロンズ』の公演があるので、このルーティーンを基盤とした上で、その隙間にコンビとして新しくできることや、自分の自己実現に向けて、いろいろできればいいなって思っています。
ーー最後に見どころ含めてPRコメントをお願いします。
『裸々(らら)』って言ってるくらいなんで、すべてをさらけ出しました。ある意味、普段は服を着ている自分を見てもらっていますが、僕の裸に興味があったら、乳首が見たかったら……ぜひご覧ください。
ーー(笑)。ありがとうございました!
取材・文:浜瀬将樹
『裸々(らら)』
2022年3月25日(金)発売
著者:村上 純
定価:1,870円(10% 税込)
発行 ドワンゴ/発売 KADOKAWA
https://www.amazon.co.jp/dp/4048931032
※KAZMAのZはストローク付きZ