終戦から9年が経過した1954(昭和29)年の5月3日早朝、和歌山県のある町で生まれ育った当時18歳と15歳の若者が就職のために東京駅に降り立った。
>>58本のダイナマイトを持った少年がセスナ機を爆破!?【衝撃の未成年犯罪事件簿】<<
少年たちは友人同士で、東京での新生活に胸を膨らませていた。
だが、都会を知らない2人は東京駅に到着して早々、新たな壁にぶつかることになる。
勤め先へ行くのにはまだ時間があると、東京駅の構内を見学して歩いていたところ、2人そろってスリに遭ってしまい、持ち金の大半を取られてしまったのだ。
東京に着いてすぐに、当面の生活費や交通費などを失ってしまった2人は意気消沈。実家へ帰ることも誰かに金を借りることもできず、2人は呆然と立ち尽くしてしまった。
だが、しばらくして2人はわずかに残った現金である買い物をすることになる。それは露店で売っていた小型ナイフであった。
2人はその夜、小型ナイフを片手にタクシーに乗車。運転手の背中にナイフを突き刺し、乗車料金900円を踏み倒したという。
タクシー運転手は幸いにも命に別条はなかったが一時重体となり、全治6週間のけがをした。
15歳の少年はすぐに警察に逮捕されたが、18歳の少年はその後も逃亡を続け、2日後に愛知県内で逮捕されたという。
少年がなぜ愛知県まで逃げたのかは不明だが、故郷である和歌山県に帰ろうとしていたのではないだろうか。
戦後の貧しい時代、新天地で働く若者も大きな苦労をしていたのである。