初日から4連敗中の正代はこの日、「2勝2敗」の平幕・阿武咲と対戦。立ち合いから鋭く踏み込んできた阿武咲に右のおっつけ、左ののど輪で圧力をかけられたが、右を差し体を密着させながらこらえる。そこから一瞬の隙をついて左の上手をつかむと、そのまま阿武咲を地面に転がし勝利した。
取組後の報道によると、今場所初めてリモート取材に対応した正代は「とりあえず、ホッとしている」、「なかなかきっかけがつかめず、モチベーションがだいぶ下がっていた」と、4連敗中の苦悩や初勝利に安堵した旨をコメント。同時に、「今日みたいな思い切り圧力かけて、前に攻められるような相撲を取りたい」と6日目以降の復調を誓ったという。
この正代のコメントを受け、ネット上には「前日までは『やる気あるのか?』って相撲が続いてたけど、今日は連敗ストップへの気合が感じられて良かった」、「とりあえず1つ勝ったから、これをきっかけに場所を盛り上げるような逆襲を見せてくれ」と激励の声が寄せられた。一方、「今更勝ってももう遅いと思う、霧島みたいに関脇に転落するのがオチだろ」、「正代は中盤・後半に強い力士でも無いし、前半の大負けはもう取り返せないのでは」と、5日目での初白星はもう手遅れだとするコメントも多数みられた。
角界では1969年7月場所から“大関は2場所連続負け越しで関脇に転落、転落した場合は翌場所10勝以上で復帰が可能”という現行のカド番制度が運用されているが、この制度下で初日から4連敗を喫したカド番大関は1992年11月場所の霧島(現陸奥親方)のみ。霧島は5日目に連敗をストップさせたが、その後7日目に右足首靭帯断裂の大怪我をして休場に追い込まれ「1勝7敗7休」で関脇に転落。その後大関には復帰できないまま、1996年3月場所で現役を引退している。この前例もあり、ここから正代が復調することは考えにくいとみているファンも少なくないようだ。
「正代がここからカド番脱出を実現するためには、残り10日間で『7勝3敗』以上の好成績を収める必要があります。大関という地位だけを見ると決して不可能ではない数字ではあるのですが、正代は過去6場所の6日目~千秋楽が合計『29勝31敗』と黒星が先行している上、7勝以上をマークした場所は1度もありません。これらのデータに加え、正代は今場所直前の3月4日に『稽古に支障はないけど体力的に、ちょっと落ちているのは感じてます。ちょっと(調整は)遅れているような気がします』と、2月7日に判明したコロナ感染の影響でコンディションが仕上がっていないと不安を吐露したことも伝えられています。5日目まで勝利がなかったのもこの調整遅れが響いているものと思われますが、本場所中は稽古の時間もそう多くは取れないため、中盤・終盤にかけての復調は極めて厳しい状況であると言わざるを得ません」(相撲ライター)
18日の6日目は、前日に横綱・照ノ富士を撃破した平幕・玉鷲と対戦予定の正代。仮に敗戦ならいよいよ後がない状況となるが、難敵相手に星を挙げることはできるのだろうか。
文 / 柴田雅人