映画監督のセクハラ案件と言えば、2020年に亡くなった韓国の故キム・ギドク監督が、複数の出演女優から性被害を訴えられたケースが知られる。さらに、アメリカのハリウッド映画の大物プロデューサーであるハーベイ・ワインスタイン氏が、レイプと性的暴行の罪で禁錮23年の判決を受けたケースもある。
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日本においても、こうした例は存在する。
2021年には遊山直奇監督が、出演者の千尋氏からセクハラ被害をネット上で告発されている。詳しい経緯は「映画監督・遊山直奇の映画『マーダーボード』制作中止の経緯において行われたハラスメントについて俳優が告発」として、togetterにまとめられている。
千尋氏の主張は、映画『マーダーボード』の出演を通じて監督が千尋氏に好意を寄せるが、彼女に恋人がいるとわかると監督は「失恋」したとして、一方的に製作中止を伝えられた。これはセクハラ、パワハラではないかというものだ。
これに対し、遊山氏は概ね事実関係を認めるものの、映画の製作中止に関しては制作費や技術的な側面もあったと主張していたが、後に関連ツイートを大量に削除し物議を醸した。映画監督と出演者という非対称的な関係から生じる問題を浮き彫りにしたと言えるだろう。
同様のケースでは、2017年の松江哲明監督の例もある。10年前に製作公開された『童貞。をプロデュース』の出演者、加賀賢三氏から性的強要があったと訴えられたのだ。この作品は加賀氏が望んでいないにも関わらず、毎年のように上映が行われ、トークの現場で加賀氏が監督に詰め寄ったことで表沙汰となった。
作品では、加賀氏がセクシービデオの撮影現場に連れ出され、性的行為をするように無理やり求められたとするもの。セクシービデオ業界と言えば、女優に対する出演強要問題が取り上げられがちだが、このケースは男性の出演者の望まないケースを浮き彫りにした。2019年に松江氏は撮影や上映を「強引に進めてしまった」と加賀氏に謝罪している。こちらも映像、映画関係者では先輩にあたる松江氏と後輩の加賀氏という上下関係から起こったトラブルだと言えるだろう。
こうして見ると、映画業界のセクハラ、パワハラ問題は一部の特殊なケースではなく、業界全体の気質の問題を含むものだと言えるかもしれない。