2−3と1点ビハインドの7回、代打で打席に入った中井は、高めのボールを逆らわずライトに運ぶクリーンヒットを放ちチャンスメイク。見事なラストを飾り、横浜スタジアムに集まったファンからは敵味方問わず万雷の拍手が送られた。
試合後の引退スピーチでは「1軍で初めて出場したのがここ横浜スタジアムでした。その後戦力外を受けて、横浜スタジアムを本拠地とする横浜DeNAベイスターズに移籍して3年間でしたがファンの皆さんの前でプレーし、今日選手として最後にプレーする姿を見せられたことをうれしく思っています」とこの場所への縁とファンに感謝。
「14年間の現役生活では、誇れるような成績も残すことはできなかった」と自嘲気味に振り返るも、優勝を経験したジャイアンツと、その経験を元に3年間過ごしたベイスターズに「歴史と伝統あるジャイアンツ、これから歴史を築いていくベイスターズ、この2つの素晴らしい球団でプレーできた」とし「監督、コーチの方々、先輩たち、同級生、後輩たち、チームスタッフ、そして大勢のファンの皆さま。全ての出会い、経験のおかげで僕は野球人として、人として成長させていただいたことが最大の誇りであり、一番の財産です」と続けた。最後のヒットには「少しでもファンの皆様に恩返しできたなら、僕の現役生活も大きな意味があったのかなと思います」と胸を張った。
印象的だったのは、息子と場内を一周したシーン。スピーチでも「出会った時から今日まで、一番近くで一緒に戦ってくれて、どんなときも一番の味方でいてくれた妻。自慢のパパでいたくて、日々エネルギーをくれた息子。2人の存在が心強くて厳しいプロ野球の世界で頑張ることができました。本当にありがとうございます。第二の人生も3人で一緒に歩んでいきましょう」と感謝。17日の引退会見でも、戦力外通告を受けるであろう時「潔くユニフォームを脱ごうと思っていると妻に伝えたら、妻から手紙を頂いて『やってほしい気持ちもあるけど、意思を尊重したい。これから先も家族一緒にいるし、ずっと応援し続ける』と。胸にしみるものがありました」と家族愛を表現していた。今シーズンの入場曲、緑黄色社会の「Mela!」の「こんな僕も君のヒーローになりたいのさ」の歌詞はきっと、大好きな家族へ向けていたのだろう。
今後については「今までずっと野球をやってきたので、野球に恩返しをしたいと思います。そのために勉強しないといけないことがたくさんある」と目を輝かせていた。誰にでも気さくで、笑顔がまぶしい中井大介の第二の野球道も、きっと輝き続ける。
取材・文・写真 / 萩原孝弘