試合後の工藤公康監督は「あとアウト1個が難しいよね。負けて悔しい思いをして、どう自分を奮い立たせるか」と、2アウトまでこぎ着けながらも逆転の4連打を浴びた甲斐野央投手をかばった。
しかし、プラス材料もないわけではない。
4回に2点適時打を放った砂川リチャード内野手(登録名はリチャード)だ。このまま、“スタメン三塁手”として、終盤戦のキーマンにもなりそうな雰囲気だった。
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「昨年3月、ようやく支配下登録を勝ち取ったんですが、一軍昇格はできませんでした。でも、二軍では本塁打と打点の二冠王に輝いており、期待していた選手がようやく出てきたというか」(スポーツ紙記者)
リチャードは「王貞治会長の秘蔵っ子」とも称されている。王会長が直接指導することも少なくない。春季キャンプ中、その様子を見たが、自らバットを振ってお手本を見せるなど、本当に期待しているのが分かった。
リチャードは2017年ドラフト会議で育成3位の指名を受けた。同年のドラフト会議は、日本ハム・清宮幸太郎、ヤクルト・村上宗隆、広島・中村奨成などの“甲子園スターたち”が注目された。
「今年の春季キャンプ中、小久保裕紀ヘッドコーチの見ている前で1000スイングを敢行しました。期待されているのは間違いありません」(プロ野球解説者)
王会長はこんなことを言っていた。「将来的に、清宮は高打率を残すタイプ。ホームランはリチャード」――。
プロ初本塁打と2本目を放った9月5日のオリックス戦でのことだ。
まず、プロ1号だが、リチャードは外角の変化球にヤマを張っていたという。しかし、実際は内角の直球で、リチャードは慌てて腕をたたみながらスイングした。打球は広いペイペイドームの左中間席の中段まで運ばれた。不意を突かれても、パワーでスタンドまで運ぶことができたのだ。
「2号目も、俗に言うラインドライブの掛かった打球でした。打球が上がり、落下する時に距離が伸びていくんです。往年の田淵幸一さんの打球もそんな感じでした」(前出・同)
リチャードがもう1か月早く一軍戦力になっていれば、自力優勝の消滅なんてことにはならなかったはず。いや、3位・楽天とは1・5ゲーム差だ。クライマックスシリーズ進出権を得れば、短期決戦に長けたソフトバンクにも十分チャンスはある。
リチャードの体重は公称119㎏だが、動きは軽快だ。守備も無難にこなしていた。敗れた工藤監督が平然としていたのは、「打の戦力アップ」を確信していたからではないだろうか。(スポーツライター・飯山満)