ホークスのサードは、今年も松田宣浩内野手が守っている。プロ16年目、長く第一戦で活躍し、定位置を守り抜いた功労者でもあるが、昨季後半から「後継者探し」の雰囲気が漂い始めた。その一番手に挙げられたのが、栗原陵矢だった。昨秋の日本シリーズでも活躍し、登録はキャッチャーだが、持ち前の打撃力を活かすため、一塁や外野の守備についてきた。
「今春キャンプから、栗原が三塁の守備練習に時間を割くことが多くなり、栗原と松田が入れ替わると予想されていました」(スポーツ紙記者)
しかし、ペナントレースが始まってみれば、「三塁は松田、栗原は外野」となっていた。松田が復活したからとは言い切れない。「やってくれるだろう」という“期待”がそうさせたようである。
「工藤公康監督と小久保裕紀ヘッドコーチの意見が割れ、小久保ヘッドの意見が採用されました」(球界関係者)
4月11日の東北楽天戦を終えた時点での松田の打率は2割5分。これに対し、栗原は3割8厘でリーグ3位と好調をキープしている。松田と栗原の両方がスタメンに名を連ねるオーダーは確かに豪華だ。しかし、「8番・サード」は、往年の松田を知るファンとしてはちょっと寂しい感もしないではない。
「工藤監督は栗原の三塁について、『複数のポジションができる方が』と説明していました。キャンプ中のコメントですが、指揮官として、全野手が複数のポジションを守れたほうがやりやすいというニュアンスに聞こえました」(前出・スポーツ紙記者)
それに対し、小久保ヘッドは「一つのポジションを…」と反論していた。
「工藤監督の中には、松田と栗原を入れ替える構想もあったはず」(前出・同)
入れ替えを予想する声は少なくなかった。
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コーチ1年目の小久保ヘッドについて聞かれると、「野手のことは全て任せる」とも語っていたので、「工藤監督が折れた」というのが周囲の一致した見方でもある。
こうした情報を聞くと、「工藤監督から小久保ヘッドへの継承」説は否定できない。
「今はチームが好調だから問題はありません。負けが込んできた時、どうなるか…。昨年、チーム功労者である内川聖一(現ヤクルト)に一軍出場のチャンスも与えず、そのまま退団に追い込んでしまいました。その影響もあって、急激な世代交代を恐れたとの声も聞かれました」(前出・球界関係者)
松田は守備中も声を張り上げており、若手投手はそれに励まされている。「欠かすことのできない選手」でもある。しかし、さらに打率を落とすようなことになれば、工藤監督は「野手のことは一任」という方針を撤回するだろう。
「昨季の工藤監督はスタメン、打順を毎試合のように変え、リーグ優勝を勝ち取りました。松田を外した打順もイメージできているはず」(前出・同)
覇者・ソフトバンクが躓くとすれば、レギュラー交代とベンチワークが原因となりそうだ。(スポーツライター・飯山満)