「キャンディマン」の都市伝説は作品オリジナルのものだが、「どこかで聞いた話」が散りばめられており、本当にそんな都市伝説が存在したのではないかという感覚を持ってしまう。
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この「キャンディマン」の都市伝説について、ウィンチェスター大学で心理学の講師を務めるジョー・スタバースフィールド氏が実際のうわさ話や都市伝説と比較しながら分析している。
「以前の、そして今回封切られる『キャンディマン』は『実在する』都市伝説を見事に融合させ、説得力のある新しい物語を生み出すことに成功している。キャンディマンは、鏡に向かってあるフレーズを一定回数唱えることで召喚される殺人鬼の幽霊『ブラッディ・マリー』やかぎの手を持つ殺人鬼の『フック』といった都市伝説と、古典的なホラー要素をミックスして考え出されたキャラクターであり、キャラクターのアイコン化に成功しています」
ブラッディ・メアリーという都市伝説は、若い女性が鏡の前であるフレーズを何度も唱えると幽霊を呼び出せる。その幽霊が恐ろしい暴力を振るうというもので、この伝説はハロウィーンに関連した鏡占いの儀式が起源であると考えられている。都市伝説のブラッディ・マリーは、しばしばジェンダーに基づく暴力の犠牲者として描かれている。例えば、ある作品では顔を切られて失血死した美しい女性の幽霊、また別の話では殺された赤ん坊の母親として描かれている。
都市伝説に複数のバージョンがあるのは地域性などが関係しているとされているが、それでも一番よく知られている主流のバージョンが存在している。これは私たちの脳が、ある種の情報に注意を払い、記憶する傾向があるからだという。架空の物語に社会的情報(他の人々や集団との交流や行動に関する情報)や生存情報(環境における潜在的な脅威や危険に関する情報)が含まれていると、インパクトが残りやすいという。
また我々の脳は、嫌悪感などの強い感情を喚起するコンテンツを楽しみ、記憶する傾向がある。これは、私たちの心が、社会的な関係を把握し、環境の中の脅威に気づき、記憶するように進化してきたことの産物なのかもしれない、とスタバースフィールド氏は語る。
映画『キャンディマン』はこれらの要素が強く、心理的に強く訴えかける。新作の宣伝では「名前を言ってごらん」というキャッチが付けられているが、この文句は人の潜在的な脅威に対する病的な好奇心を刺激し、映画の魅力をさらに高めているという。
もっとも、都市伝説自体に魅力があっても本来の作品そのものが良いとは限らない。リメイク版『キャンディマン』の成功を祈りたいものである。
(山口敏太郎)
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Which urban legends inspired 'Candyman'?(unexplained-mysteries.com)より
https://www.unexplained-mysteries.com/news/350285/which-urban-legends-inspired-candyman