8月23日の月曜日、巨人の若手・中堅野手陣が休日返上で集中練習を行った。そこに原辰徳監督やコーチも訪れ、直接指導する場面も見られた。
「急に23日に練習することが決まったみたいですね。中田翔の豪快な移籍第一号アーチに触発されたこともあれば、得点圏に走者を出しても『あと1本』出ず、ゲームを落としていますから」
関係者の一人が23日に練習が行われた理由をそう説明していた。
通常、シーズン中の月曜日は移動や休暇に充てられる。若手が自主的に練習することはあっても、Tシャツ、ジャージー姿。同日のように「ユニフォームを着て」の月曜練習は異例だ。
中田の移籍第一号(8月22日)はレフトスタンド上段に叩き込まれた。そのホームランを見て、
「広い札幌ドームから、ホームランの出やすい東京ドームに本拠地球場を変えたことは大きなプラス。中田がコンディションを整えたら、スゴイ戦力になる」
と話していたプロ野球解説者も何人かいて、それに触発されて若手が休日返上で練習をしたと聞くと、中田に野球を続けるチャンスを与えた今回の移籍劇は“美談”だが、そうとは言い切れないようだ。
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8月20日、69人。同23日、68人――。何の数字かというと、巨人の支配下登録選手数である。1チームが支配下登録できる選手数は、「70人まで」。今季のトレード期日は8月末まで延長された。この68人の中にはまだ来日していない新外国人選手のスコット・ハイネマン選手も含まれており、時期的に考えても、もう新たな補強はないと思われる。
「20日に中田を登録した後、故障で帰国していたエリック・テームズを自由契約にしました。中田を登録しても『あと1人』、支配下登録に加えることができたのに、テームズを外して『空き』を増やしたということは、新たな補強があるのでは」(プロ野球解説者)
育成選手を支配下登録するつもりなのかもしれない。おそらく、「補強」ではなく、チームのモチベーションの高めることが目的なのだろう。頑張って結果を出した若手に、支配下登録という評価を…。その育成選手たちのモチベーションについて、こんな指摘も聞かれた。
「故障・帰国中のテームズの自由契約は予定されていました。でも、中田の獲得で支配下登録されるはずだった育成選手が1人減ったとしたら」(スポーツ紙記者)
もっとも、最後の支配下昇格は見送るとの声も聞かれた。それは今オフの補強、つまり、フリーエージェント選手の獲得を予定しており、その代償として人的補償を求められた場合、伸び盛りの若手を引き抜かれる可能性も出てくるので、人的補償の対象にならない「育成選手のまま」にしておくというもの。
中田の獲得によって、支配下選手の人数調整をしなければならなくなった。古巣・日本ハムOBのプロ野球解説者が「ファイターズが彼の謹慎を解かなければ試合に出られなかった」と厳しい意見も寄せていた。
古巣への恩返しもしなければならない。茨の道はまだ続きそうだ。(スポーツライター・飯山満)