乙坂智が25日のタイガース戦で、いきなり存在感を示した。一軍昇格しての初戦、1番センターでスタメン出場した乙坂は、昨日大敗した嫌な流れを断ち切ろうと第一打席では初球を振り抜く積極性を見せると、まだ一人のランナーも出せない状況で4回先頭として登場。難攻不落のタイガース先発のジョー・ガンケルのスプリットをレフトへクリーンヒットを放ち、3番タイラー・オースティンのレフト前ヒットで先制のホームを踏んだ。同点の5回にはカット、スプリット、ツーシーム、ストレートと全てのボールに対応し粘ると、9球目のストレートをセンターへ弾き返すと、4番の佐野恵太のライト前ヒットで勝ち越しのホームイン。1点ビハインドとなった7回、先頭で回ってきた打席では、タイガースの勝利の方程式の一角、岩貞祐太から巧みにボールを選びフォアボールで出塁し、オースティンのツーベースで同点に追いつく三度目の生還を果たした。最終打席では昨年はヒットを1本も打てなかった左腕だが、19年のCSでサヨナラホームランを打った岩崎優相手に、ライトライナーで打ち取られはしたが、いい感じで捉えていた打球だった。
昨年までのラミレス政権下では「使い勝手のいい選手」との評価を得て、主にバックアップメンバーとして一軍に帯同し続けていたが、今年は春季キャンプから二軍生活。横浜に帰ってきてからのオープン戦で3試合合流し、3フォアボール1盗塁と持ち味を発揮したが、その後は声がかからない状況だった。
それでもファームでの直近5試合で14打数8安打としっかりと調整を続け、好調をキープしたことは突然の昇格、しかもスタメン起用でいきなり結果を残したことで明確となった。2017年、伝説の泥んこCSで代打3ランホームランを放った相性のいい甲子園で存在感を示した乙坂智。生まれも育ちも横浜の生粋の浜っ子が、横浜一心のスローガンの元で戦う今シーズン、なかなか埋まりそうで埋まらないリードオフマンの座を、遅ればせながらも一気に奪って行きそうな勢いを感じる。
取材・文 ・ 写真/ 萩原孝弘